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 キャッチした約束の球をわたしが持っているカゴに入れる。  カゴは人間ごとに違う。わたしたちはひとりにつき、ひとりの人間の担当と決まっている。  約束は混ざりあって一気に落ちてくるけれど、なぜだかわたしたちは、自分の担当の人間が交わした約束を見分けることが出来る。自分の担当の約束だけ、光り輝いて見えるのだ。 「今日は随分、むらさきが多いなぁ」  しかも色味は黒っぽい。忙しい一日だったのだろうか。  こんな風に、その日の約束の色で、その人がどんな一日を過ごしたのか、創造するのは難しくない。  例えば、赤が多い日は、きっとデート。将来の約束や、「またここに来よう」と言った約束をたくさんする日。  そんな風にイメージする。そうすると、ほんの少しだけ近づける気がする。  それでも、わたしたちは相手がどんな人なのかは分からない。  そんなことをしたって、相手に会えるわけでもないのに。 「…………」  なのにどうして、こんな風にふと気づけば想いを馳せているのだろう。
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