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 そうして、5か所を回り終えたわたしたちは、保管所に戻ってきた。背負っていたカゴをおろして額の汗をぬぐう。  でも、これで終わりじゃない。  所定の場所に約束を収めるところまでが仕事だ。回収した日ごと、色ごとに違う棚が用意されているので、そこに分けていく。 「お、良かったな、忘れられてた約束、いくつか回収されてるじゃん」 「本当だ」  棚に並んでいる約束は、いつの間にかなくなっていることがある。それは、憶えていた約束が相手に思い出されて、履行されたということ。  今日は昨日まであったはずのきいろの約束が1つ、みどりの約束が1つ無くなっていた。友達と家族。どうして人間は、友達とか家族とか、そう言う大事なひとと交わした約束を一度だって忘れてしまうんだろう。  というか、わたしの担当している人間は、相手に忘れられても憶えている約束の数が圧倒的に多い。その所為でわたしが拾わなきゃいけない量も増えるから、大変っちゃあ大変だ。 「…………よいしょ」   「アンタが担当してる人間って、保管されてる約束の数多いわりに、あかの約束あんまりないね」 「確かに、そうですね」  空いたスペースの日付プレートを付け替えて、棚に陳列していく。最後にみずいろを並べようと手に取って、その時漸く、指定の棚がないことに気がついた。
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