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 当然ドアには鍵が掛かっていた。佐原は極力足音を立てないように慎重に裏手に回って様子を伺った。どの部屋もかっちりカーテンが引かれている。旅行にでも出掛けているのか、裏庭に面した縁側の雨戸まで閉まっていた。佐原は様子を伺いながら、家屋に沿って歩いた。縁側の角を左に折れる。左手に小窓を二つ過ぎると勝手口だった。彼はドアノブに手をかけた。『よっしゃ!』──無施錠だ。たまにこういうラッキーがあるから泥棒はやめられない。佐原は口元をニヤつかせ時計を見た。  午後一時三十一分。  佐原はキッチンに忍び込んだ。窓はあるがコンクリート塀を挟んですぐに隣家があるために薄暗い。キッチンの先の廊下も閉まった雨戸のせいで夜のような暗さだった。カーテンは遮光カーテンか。まず目指すは居間だ。佐原は頭に浮かべた間取り図に従って、居間と当たりを付けた部屋の壁に懐中電灯を向け、ここで初めてそのスイッチをONにした。すると懐中電灯が差す明かりがテレビに反射した。佐原の当たり通りに居間である。──彼は日頃から物色の順を居間から寝室と決めていた。 『まずはテレビ台の引き出しだ』と、足を三四歩踏み出したところで足先が柔らかい何か重いものを蹴って、佐原は前のめりになりそうになった。 『わッ……』  足先の感触は大型犬でも蹴った感じか、もしくは……彼はテレビに向けていた懐中電灯を足元に向けた。すると彼の足元に半裸の女が転がっていた。 「ひゃっ!」  佐原の口から情けない声が漏れた。
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