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六年はあっという間に過ぎた。
入学式の日に出会ったあなたたち魔法使い見習いと私たち下級妖精は卒業式の日にお別れすることになっていた。
卒業式の前に行われた最後の授業は妖精との契約解除の儀について。
クラスメイトと他の下級妖精たちは次々と契約を解除していく。
あなたと私は泣いて泣いて嫌がって、先生も、クラスメイトも、他の下級妖精たちも辟易させた。
契約の解除は契約した魔法使い本人にしかできない。先生に叱られ、クラスメイトに呆れられ、他の下級妖精たちに説得され、あなたはついに私との契約を解除した。
あなたと別れてから私はずっと泣いていた。
あなたも卒業式のあいだ中、ずっと泣いていたらしい。
だけど、六年間過ごした初等科の寮からずいぶんと離れた場所にある中等科の寮に引っ越す前に、あなたはこっそり私のことを盗み出しに来てくれた。
教材室にたくさんぶら下がっている私たち下級妖精が入った籠。その中で泣いている私を見つけ出してこう約束してくれた。
「あなたは私にとって一番の仲良しで、唯一無二の親友。だから約束する。もう絶対に契約を解除したりなんてしない。ずっといっしょにいる」
そうして、もう一度、契約の儀を結んでくれた。
籠に閉じ込められた他の下級妖精たちが言った。
あなたと私が再び契約の儀を結ぼうとするのを見て。あなたと私が教材室を出て行こうとするのを見て。
口々に言った。
――すぐに籠に戻って。
――もう一度、契約を結ぶなんてやめなさい。
――あなたたちはもうお別れしなければいけないの。
――人間と私たちとでは約束の意味が違う。
――私たちといっしょに次の入学式を……新しい〝友人〟を待ちましょう。
あなたが私を迎えにきたことに嫉妬しているんだと思った。自分たちの〝友人〟は迎えに来てくれないからそんな意地悪を言うのだと思った。
だから私は彼ら彼女らが止めるのも聞かず、初等科の教材室をあなたといっしょにあとにした。
でも、そうじゃなかったのね。彼ら彼女らの言うとおり。人間と私たちとでは約束の意味が違う。
多分、きっと、あの卒業式の日があなたと私が別れるべき正しいタイミングだったのね。
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