闇妖精の作り方

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 中等科にあがったあなたは中級妖精と、高等科にあがったあなたは上級妖精と契約を交わした。  初等科時代、落ちこぼれだったあなたは中等科、高等科では優等生だった。夜遅くまで勉強机に向かって、あなたと私で教科書をのぞきこんで、うんうんうなりながら何度も練習して、試行錯誤した日々はムダではなかった。  あなたの魔法への造詣は同年代と比べて頭一つ、二つ飛び抜けていたのだ。  魔法使いと行動をともにできる妖精の数には限りがある。  あなたは初等科のときには一匹、中等科のときには二匹と徐々に増え、最終的に五匹の妖精と行動をともにできるようなった。  学校のある日中、あなたは私以外の妖精たちと行動をともにする。私があなたと過ごせるのは寮の部屋にいる夜のあいだだけ。  魔法使いと行動をともにできる妖精の数には限りがあるし、初等科を卒業するときにお別れしているはずの下級妖精の私を連れているなんて知られたら、また叱られて契約を解除するように言われるかもしれないから。  朝になったら私以外の妖精たちは妖精箱から出てきてあなたとともに学校に行く。私は妖精箱の中で夜が来るのを待つ。  妖精箱というのは魔法で作られた特別な空間。魔法使いと契約しているけれど行動をともにすることのできない妖精を入れておく箱だ。  私はただ真っ白なだけの空間で夜になるのを待ち、あなたが箱の外に出してくれるのを待ち、昔のようにあなたにほおずりして、あなたとおしゃべりできる時間を待った。  中等科一年の頃には毎晩、箱の外に出してくれた。  だけど、私以外の妖精と魔法の練習をしなくちゃいけなくて箱の外に出してくれる回数は徐々に減っていった。  高等科を卒業して国家魔法使いとなり、勇者様と旅をするようになってからのここ数年はまったく。  魔物がどこに隠れ潜んでいるかわからない危険な場所を旅するのだ。常に警戒していないといけない。国家魔法使いとなったときに〝友人〟になった特級妖精や旅の中で出会った神話級妖精と常に行動をともにしなければならない。  そうでなければ自分の命も仲間の命も守れない。下級妖精の私なんかを妖精箱から出して遊んでいる暇なんてない。  わかってる。わかってる……けど……。
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