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Episode.3それぞれの決意 P.2
―時を同じくして、如月邸。
目が覚めると、見たこともない部屋にいて。近くには禮萌の姿がなかった。どうやら、僕1人だけがこの場所に連れてこられたようだ。
「・・・という訳だから。よろしく頼むよ~」
(誰かの声がする・・・。昨夜の男かな・・・?)
「・・・わかりましたよ、如月さん。でも、まだ彼、目覚めないんですよ」
「あれ~?そうなの?強くやり過ぎたかな~」
「子供相手に何やってんですか・・・」
如月・・・。ということは。ここは、昨夜の2人組の男の内の1人の家か。確か、「如月」とか呼んでたような気がする。ふと、辺りを見渡せば、部屋の装飾、家具もなかなか豪勢なものだ。
(軍服を着ていたから軍人だろうけど・・・。軍人ってこんな豪華な暮らしができるのか・・・)
「とにかく、様子だけでも見とかないと。神居に叱られる。俺、ちょっと様子見てくるわ」
「理由がそれって・・・。まあ、でも。そろそろ起きてるかもしれませんしね」
(ヤバい!この部屋に入ってくる!えっと・・・!えーっと・・・!)
ガチャ。
「失礼するよ・・・」
「はわっ!?」
(驚きすぎて、変な声出た・・・)
「・・・なんかめちゃくちゃ変な声だったけど(笑)何やってんの?(笑)」
「ご、ごめんなさい!声が聞こえたので、その・・・」
(変な声って言われた!変な声って言われた!)
若干パニック状態になっているが・・・。ひとまず、怒られることはないようなので一安心する。
「えーっと。君の名前!聞いてなかったよな?名前は?」
「えっと、夜です・・・」
「夜・・・?変わった名前だな?」
「あ・・・。よく言われます・・・」
僕は、この名前が昔から大嫌いだった。孤児院で馬鹿にされたり、苛められたり・・・。でも、禮萌。彼だけは、この名前を決して馬鹿にしたりはしなかった。むしろ、綺麗だと。そう言ってくれたのだ。
「いきなり変わった名前だ、とか言うのは失礼だよな。すまん、すまん」
「えっ・・・?い、いえ!僕は・・・、気にしませんから・・・」
禮萌以外に馬鹿にされなかったのは、初めてかもしれない。だが、禮萌と僕を引き離すような人たちだ。簡単に信用するべきではない。
「禮萌は・・・、どこですか?僕だけが、なぜここに・・・?」
「早速、その質問か。仲良いんだな?お前ら」
「はぐらかさないで頂きたい!」
「わかった、わかったよ!ったく。もう一人の奴よりは、大人しいなと思ったのによ・・・」
「・・・確かに、禮萌は少し短気なところはあります。って!そんな話ではなく!」
(これが、"口車に乗せられる"というやつかな・・・)
「はいはい。んで、その禮萌?って奴は、神居が連れてった」
「昨夜、あなたの隣にいた方ですね。僕たちを引き離した理由は?」
「それは・・・。神居が、そうしろって言ったんだ。禮萌とか言う奴と、一対一で話がしたいとか言うもんだからな」
(禮萌と・・・?なにか理由があるのか・・・?)
「だから、俺はお前と話をしようって訳。なんでも聞いていいぜ?まあ、答えにくい質問には答えれねぇかもしれねぇが」
「・・・。では、早速。あなた方があの施設にいたのは、なぜですか?」
「おう!それな。それは、神居が、あの施設にはなにかある、とか言い出したもんだからな。あいつ。一応、偉い奴だから。だから、俺は護衛として着いてったって訳よ」
「なにかある、というのは、あの施設での実験のことでしょうか?」
「まあ、なにかと、あの施設は良からぬ噂が立ってたからな」
(そんな噂があったにも関わらず、軍は今まで手出ししなかった、ということか)
「なんで今更、とか。思ってるだろ?お前」
「えっ!?い、いや。それは・・・」
「まあ、そう思うのも無理はねぇよな。まあ、でもほら!助かったんだし!良かったじゃねぇか!」
「・・・よく、そんなことが言えますね?"僕たちだけ"しか、助かってないんですよ。あそこには、まだ取り残された仲間が・・・」
運がよかった、とは僕は思いたくない。この人たちに出会ったのは、偶然だ。あのまま逃げれたかもしれないし、最悪逃げれなかったかもしれない。だから、僕は。残された仲間のためにも、運がよかったなんて言っていいはずがないのだ。
「・・・俺たちを今すぐ信用しろ、なんてのは言わない。だが、俺たちはお前らも、お前らの仲間も、このまま見過ごすようなことはしない。これだけは、わかってくれ」
「・・・っ!!」
「あぁ、そうだ!お前が目覚めたら、連れてきてくれと、言われてたんだった」
「連れてきてくれって・・・、どこに?」
「軍、だよ」
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