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Episode.3それぞれの決意 P.3
―再び戻って、軍病院。
「・・・それってお前。俺に自分を殴ってもいいとか、いってるようなもんじゃねぇか」
「そうだ。君にはその権利がある。だから・・・」
「そんな馬鹿な真似はしねぇ。そうしたところで、なんの解決にもなりゃしねぇんだ」
そうだ。ここでこいつを殴っても、一時的に怒りを抑えるだけにしかならない。俺は、そんな馬鹿な人間にはなりたくない。今、俺がやるべきことは―
「お前。俺たちの手伝いをするとか言ったよな?だったら、頼みたいことがある」
―こいつを少しでも信じることからだ。すぐには信用できない、なんて言ってばかりでは、人を信用することもできなくなる。それに、こいつが本当に俺たちを手伝いたいなんて、思っているかどうか。それを計るための判断材料にはなる。
「・・・頼みたいこと?」
「あぁ。そうだ。あの施設には、まだ取り残された奴らがいるんだ。そいつらを、助けてやってほしいんだ」
「君たちが脱走したことにより、君たち以外の子供たちにも、何らかの影響が出ている可能性がある、ということだね?」
「あぁ。だから、今すぐにでも―」
「―その必要はない。今朝方、あの施設の研究員全員を軍に連行した、との連絡が入った」
その言葉に、驚きを隠せなかった。だが、俺を信じこませるための罠の可能性も捨てきれない。
「・・・信用はできないだろう。なんなら、今すぐにでも軍に行くかね?あの施設の研究員かどうか、君にも確かめてもらう必要がある」
「っ!!当然だ!いってやるよ!」
―軍の収容所。
そこは、軍が捕まえてきた犯罪者を収容する場所だと、神居に言われた。研究員たちは、そこに収容されているらしい。
バンッ。(車から降りる)
「着いたぞ。ここが、軍の収容所だ」
「ここが―」
―バンッ。
「着いたぞ~。降りろ」
「はい」
(あれは・・・!!夜!?)
「ちょうどよかった。彼らも来たようだね」
「ん?なんだ、神居も来たのか」
昨夜、神居の隣にいた人物に連れられて、車から降りてきたのは夜だった。もう二度と会えない、なんてことはないとは思ってはいた。だが、今までずっと一緒だったので離れることがなかったこともあり、1日振りに会うととても嬉しく感じた。
「夜!!心配したんだぞ!!無事か!?何もされてねぇか!?」
「禮萌!?よかった!!僕も心配したよ!!うん、大丈夫。そっちこそ、なんかされてない?」
「俺が、なんかしたとか思われてんのか?これ」
「・・・どうやら、私もなんかしたとか思われているようだな」
(なんか申し訳なく思えてきたな)
「俺は問題ないぞ!疑って悪かったな、おっさん」
「おっさんって、俺のこといってんのか?クソガキ」
「やめろ、如月。彼は、謝っているんだぞ」
「僕も、疑って申し訳ありません。禮萌と離れることがなかったもので、心配で心配で・・・」
「いや。君がそう思うのは当然だ。挨拶が遅れたな。私は神居尊彰だ」
「僕は夜です。禮萌がお世話になりました」
「俺はお世話にはなってねぇぞ!?」
「ほんとにうるせぇクソガキだな。俺は、如月典央。お前の相棒には、なにもしてねぇから安心しろ」
「俺は禮萌。なにもしてねぇなら安心だな、おっさん」
「てめぇっ!このクソガキ!!」
パシン。ゴッ。
「でっ!!何すんだよ、夜!!!」
「いだっ!!おい、俺まで殴らんでもいいだろ!!!」
「もうっ!怒られるのわかってるんだから、おっさんとか呼んじゃダメだよ!」
「お前もだ、如月。クソガキなどいっちゃいかん」
「・・・。わかったよ。悪かったな、如月」
「せめて"さん付け"せんか、お前・・・。まあ、俺もすまなかったな」
なんとかこのおっさんとも仲直りし、俺たち4人は収容所へと入っていった。
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