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Episode.3それぞれの決意 P.4
軍の収容所の中は、まるで、あの施設のようで身震いがした。
(こういう、"冷たい空気"は苦手だ・・・)
「な、なんか寒いですね?」
「そうか?なんなら上着着とくか?」
「禮萌くんは大丈夫かね?寒いなら上着を貸すぞ?」
「あ、えっ?あ、だ、大丈夫だ!心配ねぇ・・・」
(如月とか言うおっさんには、バレたくねぇ・・・)
「禮萌・・・。お前、挙動不審じゃねぇか(笑)」
「如月。誰だって、こんなとこには来たくないものだ」
「きょ、挙動不審じゃねぇよ!捏造すんなっ!」
「僕たち、こういう雰囲気の場所が苦手なんです・・・。だから、禮萌も。ね?」
「お、おう!」
(心なしか、夜が大人びて見える・・・。気のせいか・・・?)
カツン。ペタン。コツン。ペタン....
扉の前には「取調室」と書かれている。ここに奴らがいるようだ。神居に案内され、取調室の様子が見える場所に誘導される。
「彼は、逮捕した研究員の内の1人だ。見覚えはあるかい?」
「・・・。うん。こいつは、データを採る部屋にいた研究員だ」
「間違いないか?」
「間違いありません。忘れもしませんよ、研究員の顔なんて」
(夜の言う通りだ。忘れるわけがねぇ・・・!)
「決まりだな」
「でも、あいつが首謀者じゃないと思う」
「というと?」
「僕たちを、あの施設に連れていった人物がいるんです。さっきの人物ではありませんでした」
そう。施設に入れられてから、とんと見なくなったあの男。あいつがいる限り、この負の連鎖は終わらない。
「そいつは、今どこにいるんだよ?」
「わかんねぇんだ。施設に入れられてから、見なくなった・・・」
「それでは・・・、捜しようがないな・・・」
「でも・・・、施設には軍が入ったんですよね?残された彼らは、救出されたんですよね?」
(そうだ。あいつらが助かっているなら、なんの問題はない!)
「・・・。非常に言いにくいことなのだが・・・」
「神居。ばらすのか?」
「なんだよ・・・。早く言え!」
「ばらすって、どう言うことですか・・・?」
その衝撃的な言葉に、俺たちは唖然とした。
「私たちが君たちを連れて帰ったあと、軍があの施設に立ち入り捜査をした。・・・だが、助け出せた子供たちは、全員とまではいかなかった。半数近くの子供たちが、無惨な死体で発見された」
「な・・・んだよ、それっ!!」
ガシッ。ダァンッ。
「禮萌!!」
ガシッ。
「離せ、夜!!」
「落ち着け」
「これがっ・・・!落ち着いていられるかっ!!」
ギリギリ。
「・・・禮萌くん。私は先程もいっただろう?君には、私を恨む権利があると。殴る権利があると」
「・・・本当の話なんですか・・・?半数近くが死体でって・・・」
「夜。お前まで暴れてくれるなよ?・・・悪いが、本当の話だ」
「そんな・・・」
ガタン。ドサッ。
「・・・すまない。私たちがもう少し早く気付いていれば、こんなとこにはならなかった」
「・・・いや。お前らのせいじゃねぇよ」
自分勝手な、身勝手な俺たちのせいであいつらは殺された。理由はどうであれ、その原因の一端は俺たちにあるんだ。
「・・・僕たちの・・・せいだよね。僕たちが、脱走なんか・・・するから・・・」
「自分を責めるな、夜。誰だって、あんな劣悪な環境にいたら・・・」
ガシッ。
「あなたたちに、何がわかるって言うんですかっ!!彼らは、僕たちのせいで死んだようなものなんですよ!?僕たちが、殺したようなものだ!!!」
「・・・夜。もういい。もうやめろ」
「だって、だって禮萌・・・、こんなのって・・・!」
ガタン。
「本当にっ!申し訳ない!!」
見ると、神居がまたしても、土下座していた。俺たちのために、泣きながら。ひたすらに謝り続けていた。
「・・・。すまない。俺からも謝らせてくれ。俺たちは、あの施設のことを放置していた。その責任がある」
如月も、神居の隣で頭を下げ、土下座していた。2人のその姿に、俺たちはなにも言うことができなかった。
「・・・。顔を上げてくれ。あんたらの、誠意は伝わった」
「そうですよ。あなたたちのせいではないんです。悪いのは、全部」
「あぁ。あいつのせいだ・・・!」
「禮萌、夜・・・」
「・・・君たちは、これからどうする?首謀者の男を捜すか?」
「あぁ。あいつ、一発殴らねぇと気が済まねぇ・・・!」
「おお!いいねぇ!それ、乗ったぜ」
「如月さんまで、そんなこと言わないでください・・・」
「ならば、我々もできる限りのサポートをしよう。共同戦線といこうじゃないか」
スッ。
「誓いの握手、ってか?」
「悪くないだろう?」
「おいおい、神居!それだと、俺と夜が握手できないじゃないか!」
「では、僕と如月さんだけで握手しましょう」
ガシッ。
「よろしく頼む」
「あぁ」
かくして、俺たちはあの男を捜すため、共闘することになった。だが、俺たちはまだ知らない。あの男を巡って、大きな戦いの渦へと巻き込まれることを―
To Be Continued...
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