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Episode.3それぞれの決意 P.1
「んっ・・・。ここは・・・?」
目に映る光景は、俺の知らないもの。少し首を右に向ければ、カーテンの棚引く窓がある。どうやらここは、どこかの施設のようだ。
「はっ!あの男!!あと、夜はっ!?」
ようやく頭が働いてきた。俺は昨夜、夜と一緒にあの施設から脱走を図った。そして、行き着いた先で軍人の男二人組に遭遇し、気絶させられたのだ。辺りを見回すがそこには―
「あれっ・・・?夜が、いない・・・?」
―夜の姿はない。2人別々の場所に連れてこられたのか。
「くそっ・・・。頭いてぇ・・・」
地面に落とされたのだから当然なのだが。
(あとで、あいつ絶対一発殴る・・・!)
―その時。
「おはよう。目が覚めたかな?」
「っ・・・!!お前は!!」
―そこにいたのは、昨夜の男だった。昨夜は暗くてよく見えなかったが、なかなかの体格をしているようだ。
(そりゃ、俺を落とすくらいやるよな・・・)
「よく眠れたかな?昨夜は、頭から落としてすまなかった」
「い、いや。別に?俺は痛くねぇし」
「そうか。なら良かった」
ストン。
「なんで座んだよ!?」
「おや?嫌なのかい?」
「嫌じゃねぇよ。それより、夜はどこに連れてった?」
「夜くんなら・・・、如月が連れていったよ」
(なるほど。俺たちを引き離す算段か)
「で?俺たちを引き離して、わざわざこんなとこまで連れてきて。一体何するつもりだ?」
「何って・・・。君たちは自由になりたいんだろう?だったら、我々がお手伝いしようかと思ってね」
「・・・は?」
この男の言葉を一瞬疑った。俺たちを自由にする手伝いって何を考えているんだ。これまでの経験上、奴の口車に乗ってもいいことなんてない。慎重に見極めなければ・・・
「・・・お前、本気でそれいってんのか?」
「私は、いつだって本気だよ。君にとっても、悪い話じゃないだろう?」
「・・・信用できない」
「なるほどね・・・。それは、これまでの経験から、ということかい?」
(何もかもお見通しか)
「・・・そうだよっ!お前らは、あの研究所がおかしいとか思わねぇのか!結局、お前らも、研究所の奴らも、同じなんだよ!俺はっ!もう何も信用しねぇっ!!」
「・・・。申し訳ない。君をもう少し早く見つけ出していれば、君をこんなにも傷付けることはなかった。本当に申し訳ない」
そう言って、この男は地面に跪いた。そして、深く頭を下げた。大の大人が土下座をするところを、この時初めて目の当たりにした。
(こいつは悪くないのに・・・。なんで・・・)
「・・・なんで・・・、お前が・・・謝るんだ?お前は・・・、俺に何もしてねぇだろ・・・」
「・・・確かに。私は君になにかしたわけではない。だが、あの施設が行っていた研究について、見て見ぬふりをしてきたことは紛れもない事実だ」
「軍が・・・、見て見ぬふりを・・・?それは・・・本当なのかっ!!」
「本当のことだ。だから、君には私を恨む権利がある」
(そん・・・な。バカな・・・ことが・・・)
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