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プロローグ
煌びやかなシャンデリアや広間の装飾、華やかに着飾った人々、軽やかな音楽。城の大広間で、絶世の美女と呼ばれる女性と優しい笑顔が印象的な美青年が踊っていた。
二人は誰が見てもお似合いの恋人同士に見えるだろう。周りの令嬢達からは感嘆の声が洩れる。
「いつ見ても、溜息が出る程ジュディット様は美しいですわぁ」
「レナード殿下と、とてもお似合いよね」
「そんな事言ってはダメよ。ジュディット様にはヴォルフラム殿下がいらっしゃるのに」
「ヴォルフラム殿下は確かにジュディット様の婚約者ではあるけど、レナード殿下がジュディット様を略奪するのではないかって、皆様仰っているわ」
「嫌だわぁ、美男美女の三角関係なんて、素敵〜!」
令嬢達のはしゃぐ笑い声が聞こえる。
何時もの事だが、完全に自分の存在は忘れられていると、密かに溜息を吐いたのは、まだあどけなさが残る公爵令嬢のユスティーナ。
「三角関係……ですよね」
一応レナードの婚約者な筈の自分は存在感がないのか、何時だって噂や話題の中にユスティーナはいない。
改めて、未だ華麗に優雅にダンスを踊る二人を見遣る。
(レナード様、愉しそう)
彼がジュディットを見る目は、ユスティーナを見る時とはまるで違う。彼女が彼にとって特別な存在なのだと良く分かる。
たまに思う。
令嬢等の噂話も莫迦に出来ない。もしかしたら本当に、何時かレナードはジュディットをヴォルフラムから略奪するのではないかと思ってしまう。そうなれば自分は、お払い箱だ。
そう思うと悲しくて、胸が痛いくらいに締め付けられる。彼と婚約して数年……慣れた筈の痛みにユスティーナは顔を歪ませた。
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