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2人目の証言
2人目は私より一回りくらい年齢の高い男性だった。なんとか取材には応じてくれたが、態度は冷たく、どこかピリピリしているようだった。
「言っとくが、メールで話したこと以外大したことは言えないぞ。それでも謝礼はしっかりともらうからな」
それでも構わないと話すと、ようやく男性も話初めてくれた。
「とにかくあの石はろくでもない物だったんだよ。会社の帰りに道端に落ちているのを見かけたんだが、どうにも気になって拾ったらそこから不運の連続だ。元々俺は小さな会社で営業のトップをやってたんだが、石を拾ってほどなくして、会社が倒産したんだよ。別にそこまで業績が悪かったわけじゃなかったのに、急にトラブルが重なってあっという間に倒産だよ。確かに会社には不満もあったが、食い扶持をなくされたらたまったもんじゃない」
男性は荒々しくコーヒー口に運ぶ。前のことを思い出し、再びイライラしているように見えた。
「それだけじゃなくて会社が倒産してすぐに、妻とも離婚になったよ。会社が倒産するや否や、すぐに別の男と不倫して出ていきやがった。挙句には娘の養育費まで払えって言ってくる始末だ」
確かに話だけ聞くと、相応悲惨な目にあっていた。これだけ荒れた雰囲気になってしまうのも納得だった。
「とにかくあの石は不幸を運ぶ石で間違いない。手元からなくなって清々してるよ。……ただ1つ気がかりがあるのは、あの石を持っていた間、何か考えていたことがあるはずなんだがそれが思い出せないんだよな」
最後に気になることを呟いていたが、結局真相は分かることもなく、男は謝礼を握って帰ってしまった。
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