願い石?

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願い石?

 4人の話を聞き終わったが、結局大した進展はなかった。事前に聞いていた通り、変わった石を拾う、そして気がつけば無くなっている。それ以外の変化はかなり個人的な主観が入ってしまいあまり参考にはならなかった。  これは記事にするのは難しそうか。半ばあきらめかけていたが、予期せぬ形で状況が変わることになった。  その日は大した予定もなく、近場をブラブラ散歩していた。すると足下に奇妙な気配を感じた。  視線を降ろすと、そこには何とも形容し難い形の石が落ちていた。ただ平凡な石のはずなのに、それから目を離すことができない。  無意識のうちに私はその石を拾い上げていた。やはり手に取り近くで見ても、何ら特徴的なところはなかった。  そのはずだが、突如として体に電流が走る。……もちろん物理的にではないのだが、頭の中に1つの思考か唐突に現れる。  望みは何か  そんなこと露ほども考えていなかったはずなのに、頭からその考えが離れない。それが気持ち悪く感じ、つい自分なりに望みを考えてみた。  自分の望みは、今交際している彼女と結婚することだろうか。学生の頃から苦楽を共にし、今の不安定な仕事にも理解を示してくれ支えてくれている。  それに合わせるなら、今の仕事が軌道にも乗って欲しい。確かに彼女からの理解は得られているが、そろそろ彼女にも裕福な思いをさせてあげたい。  普段はそんなこと考えもしなかったのに、驚くほど自分の望みは綺麗な形を成した。  その石との出会いから、自分の中で何かが変わった。今まで安定して来なかった依頼が、安定してやってくるようになった。今までの仕事の起伏が嘘かのように、毎月多くの仕事がやってくる。  仕事の増加に伴って金銭面にも余裕が出来た。そのタイミングで私から彼女にプロポーズもした。その結果も即決の2つ返事。まさに幸せ絶頂であった。  そんな幸せな日々の中、私は結局記事にしなかった、例の石についての記事の下書きを見つけた。  この記事を見つけて、自分が気がつけば石を無くしたことに気がついた。どうしてここまで執着した物のことを、こうも綺麗に忘れていたのだらうか。それに何か石を拾った時のことも忘れている気がする。  結局いくら考えても、忘れた理由を思い出すことはなかった。……ただそんなこと大した問題ではないだろう。私は今これだけ幸せなんだし、きっと些細なことだったのだろう。  その下書きのデータを削除して、再び記事の執筆を再開した。
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