倫太郎先輩、好きだ

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倫太郎先輩、好きだ

「倫太郎先輩」 悠太は倫太郎のほうを振り向いた。 「俺、倫太郎先輩に聞いてほしいことがあるんです。いいですか?」 「ああ、いいぞ」 倫太郎は笑顔で答える。悠太は深呼吸してから語り始めた。 「倫太郎先輩、好きだ」 悠太の声は震えていた。 「俺は、倫太郎先輩が好き」 (なんだ、いきなり……) 倫太郎の心臓が跳ね上がる。 「俺、倫太郎先輩が好きなんです。ずっと前から好きでした。先輩は、俺のことをどう思っていますか?」 悠太は倫太郎の目を見つめてくる。 (おい、まさか……) 「悠太、いまここで言うつもりなのか? 俺たち、ふたりきりだけど……誰かに聞かれたらまずいんじゃないか? ここ外だし……」 「大丈夫ですよ。この辺りには誰もいません。それに、いま伝えないと後悔すると思ったんです。だから……」 悠太はじっと倫太郎を見ている。 (そんな目されたら断れないだろ……) 「わかったよ。聞かせてくれ」 悠太は顔を輝かせる。 (まぶしい……) 「はい! 俺は倫太郎先輩が好きです。愛しています。俺と付き合ってください」 (きた……) 倫太郎は口を開いた。 「いいよ」 「え……いいって言いましたよね!?」 悠太が大声で叫んだ。 「もう、いいって言うしかないだろ」 「ありがとうございます!」 悠太は倫太郎に抱きつく。倫太郎は抱きしめて、悠太の背中を優しく叩いた。 駅のホームのベンチに、倫太郎と悠太は座った。家が近いふたりは、同じ電車で帰る。 「どうして、そんなに俺を好きなんだよ……」 悠太に訊いてみるが、返事がない。悠太はぼんやりしていた。 (寝てる?) 悠太の頬に触れると、悠太はびくりと反応する。 (起きたか?) 「……先輩……」 悠太は目を開けた。 「すみません、眠っちゃってました」 「いいよ、別に。疲れているんだな」 「いえ、最近、ちょっと夜更かし気味なので……あっ、先輩の手、冷たくて気持ちいいです」 「あー。俺、体温低いからなあ」 悠太は倫太郎の手にすり寄る。 「じゃあ、俺があたためます」 (猫みたいだな) 「先輩、あったかいですか?」 「ああ。……悠太、本当に俺のことが好きなんだな」 「はい、大好きですよ」 悠太は微笑む。その笑顔がまぶしくて、倫太郎は目を細めた。 (悠太以上に俺を好きになってくれる人はいなかったな……この先も現れないだろうな) 17年しか生きていないが、本能でわかる。 抱きたい、抱きたいと、性的な言葉を口にする悠太。 その裏にある、はっきり言葉には言い表せない想いを、倫太郎は受け止めていた。 (悠太は、まだ16歳になったばかりなんだ……うまく好きって言えなくて、当たり前だ。それなのに、あんなにがんばって俺に告白して……) そう思ったら、急に愛しさが込み上げてくる。倫太郎は悠太を見つめた。 「悠太。目を閉じて」 言われるまま目を閉じた悠太の唇を、奪った。 「誕生日おめでとう」 「先輩……」 「おまじないの効果、あったみたいだな」 「え」 「勇気が出るおまじない。ちゃんと俺に告白できたじゃないか」 口ではかっこいいことを言っているが、倫太郎はときめいていた。 くちづけした瞬間、悠太とした365回のキスが、あの頃した全てのキスが、一気によみがえった。 それは、とても甘く、切ない思い出だった。 悠太は真っ赤になっている。 「先輩、ズルいよ……いきなりキスするなんて……」
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