優しいキスじゃ効果ないかも

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優しいキスじゃ効果ないかも

でも、その言葉とは裏腹に、悠太はとてもうれしそうだ。 (……かわいい) 倫太郎は思った。 (俺、悠太のこと、本気で好きだ) いまなら、自信を持って言える。 「悠太、俺も悠太が好き」 「えっ!?」 「すごく好きだって、心から言える」 倫太郎は悠太をまっすぐに見つめた。 「……マジですか?」 「ああ、大真面目だ」 倫太郎の言葉を聞いて、悠太は泣き出した。 「えっ!?」 「す、すみません! うれしくて、つい……!」 「そんなにうれしいのか」 笑いながら、悠太の頬に手を添えた。 「仕方ないなあ、またおまじないしてやるか」 悠太にそっとくちづけした。 顔を離そうとしたら、悠太に顎をつかまれた。 「もう、そんな優しいキスじゃ効果ないかも……」 悠太が倫太郎にキスをする。深く、深く。倫太郎は悠太を受け入れて、舌を絡める。 そのとき。 「間もなく、一番ホームに列車が入ります。足元にご注意ください」 駅員のアナウンスに我に返り、倫太郎は悠太を突き飛ばした。 「うわあ!?」 「ご、ごめん! つい……」 「もう! いきなり突き飛ばすなんてひどいですよ!」 そう言いつつ、悠太は笑顔だった。 「電車、来るって」 「はい……」 ふたりは立ち上がった。 「先輩……」 悠太が倫太郎の耳元でささやく。 「ふたりきりになったら、たくさんキスしましょう」 「ああ」 「キスだけじゃないですよ、するのは」 「わかってるよ」 電車がホームに滑り込む。 「さあ、行きましょう」 「うん」 自然と手をつないだ。 あたたかい悠太の手。この手が、これからどんなことをしてくれるんだろう。 悠太の温もりを感じながら、倫太郎は胸が高鳴った。
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