模索

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 今日は特に仕事も頼まれていないので、勝手に外回りをしている。  某企業を調べてみたが、K島に工場を建設し、既に操業を開始していた。他には港の建設など、K島において新たな開発も行っていた。  かなりR国に貢献しているな。 どうせ、R国は何の支援をしていないだろう。全て、某企業が自力でやっている状況だと思われる。  R国のことだ。某企業から利益を吸い上げられるだけ吸い上げるだろう。  不法占拠された島における活動に、日本からの支援はあり得ない。R国との関係もよろしくない。  経済的にかなり不利な状況下にあるのに、K島の発展にどうしてここまで力を入れる?  誰もが思いつく疑問への回答に辿り着けない。  変な状況だ……。  ベンチに座り、缶コーヒーを飲みながら、周りを意味なく見渡す。  かつて仲間だった刑事が視界に入る。名前は杉山(すぎやま)。何時もくだらない事ばかり喋っていた奴。そのくらいの印象しか残っていない。  そんな奴が、何故、こんな所にいる?  確か、今は麻薬担当だった筈だが。  面白そうだな。  私は笑みを浮かべ、杉山を尾行することにする。  杉山の下手糞な尾行のお陰で、奴が誰かの尾行をしていることが分かった。 それにしても、間抜けな奴だな。自分が尾行されているのに気が付かない。尾行している人間が、尾行をされていると言う、間抜けな状態が続き、笑いを堪えるのに必死なってしまう。  尾行している相手は黒い服と黒いズボンを着用している。猫背だが、体つきががっしりとしている感じだ。  しかも、日本人ではない。  何処の国の人間だが分からないが、金髪に、ほりの深い顔つき、ワイルドな感じだが整った感のある顎鬚。  尾行をしながら観察をしていたら、男は人通りの多い通りを避けるかのように、脇の道へと入っていく。  尾行がバレたね。  杉山は尾行がバレた事に気が付かず、男を追って、脇の道へと入っていく。  私も脇の道へと入っていく。  人通りの全くない建物に挟まれているような感じの昼間でも薄暗い通り。  完全に罠でしょう。  私の目の前には、外国人に叩きのめされている杉山の姿があった。  助けてやるか。  私は背後から外国人を警棒で叩きのめす。  外国人はバッタリと正面から、杉山に覆いかぶさるように倒れ込んだ。  倒れ込んだ外国人は黒い覆面のような物をかぶっている。  黒い服、黒い覆面……。  あり得ない事もないか。  もしそうなら……。  借りはきっちりと返さないとね。  杉山もケーオーされているし……。
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