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杉山がベッドの上で意識を戻す。包帯の巻かれた顔が痛々しいな。かなり殴られたのだろう。
「大丈夫か杉山。安心しろ。私の車でここまで運んだ」
「沖田刑事。復帰されてたんですか。元気になって、良かったですね」
軽い感じの挨拶をしてくる。
「残念な事に、お前をぶちのめした犯人は取り逃がしてしまったよ」
「そうですか。助けてもらって、申し訳ないですね。沖田刑事が無事でよかったです」
疑わないのか。相変わらずつまらない奴だ。
「そう言えば、あの外国人……」
「何か思い出したんですか!」
杉山は一気に上体を起こし、表情を歪める。
「確か、R国語を話していたな……。それと……。以前、某企業で見かけたことがあったかな」
「確かですか!それ!」
「忘れやしないよ。あの時、何故、R国の人間がこの企業にいるのか、不思議で仕方なかったからね」
「そうですか。貴重な情報、ありがとうございます」
「それと、この件は黙っておく。越権で面倒な事になりたくないからな」
「良いんですか。すいません。助けてもらった上に、情報まで頂いて。悪いですね」
「気にするな。速く怪我を直して、頑張れよ。あの外国人、速く捕まるといいな」
杉山は深々と頭を下げる。
私は笑みを浮かべ会釈をして、病室を出ていく。
廊下を歩きながら、思わず笑いだしてしまう。
杉山!
私からのプレゼント、大切に使ってくれよ。それなりに期待しているからな。
後は、杉山がやってくれるだろう。それなりの結果は、間違いなく得られる。
それにしも……。
杉山、少しは人を疑えよ。
途中で笑いを堪えるのに必死だったよ。
大失態をやらかした後に、取り返そうと躍起になって、冷静さをうしなってしまう部分があるのは分かるけど……。
私の情報の出し方、変だっただろう。
それに……。
私が犯人を取り逃がす訳、ないだろう。
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