突破口

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突破口

 R国と共同でK島での共同開発が許可されたからと言って、麻薬そのものを持ち込むのは不可能だ。港から堂々と大量に持ち込めるものではない。  外交官の特権があったとしても無理だろう。  港の薬物検査において、賄賂を使ったとしても、持ち込める量は高が知れている。  K島に行く社員に持たせる……。  同じだ。  大量には持ち込めない。  いや、入国する際に薬物検査を突破出来ない。  某企業がK島での共同開発の権利を得るには、それなりの裏があったのだろう。  ニコライとの繋がりがあったのは間違いない。外交官の推しがあったからこそ、R国との良好な関係が築けた。  そして、そこには麻薬が絡んでいたと言うことだ。  だから、あの事件の捜査をしていた私達は奴らに狙われたのだ。確かめたかったのは、ニコライとの繋がりではない。  麻薬の件を握られていないか、確認をしたかったのだ。  考え巡らせていたら、杉山が浮かない表情をして、私の職場へとやってきた。 「沖田刑事。某企業の件、関わらない方が良いですよ。かなり厄介ですよ」 「どういう事だ。詳しく教えてくれよ」 「人目のつかない所で……」  杉山の表情は厳しくなり、私を部屋から出るよう促してきた。立ち上がり、杉山についていく。  人気のない廊下の隅。振り返る杉山。 「某企業の件、上から圧力がかかりました。これ以上の捜査は無理ですね」 「またかかったのか。自ら『悪いことをやっています』と言っているようなもんだな」  私は笑いながら答える。 「笑い事じゃないですよ。お陰で、異動になりそうです」 「異動か。それなりの成果があったからじゃないのか。一体、何を掴んだんだ」 「いや、特に何かを掴んだ訳では……」 「だろうな。無事な所を見ると」 「無事じゃないでしょう。異動ですよ。冗談じゃない」  確かに何か重要な物を掴んでいたら、ここでこんな事を話している状況ではないはずだ。命を狙われかねない。  だが、何かを掴んでいないか気になる。 「某企業の何かを掴んだから、圧力を掛けられたんだろう。ここでぶちまけちまえよ」 「いや……。特には何も。麻薬を扱っている感じはなかったですし……。ただ、K島に行っている社員の数が、やたらと多いなってことくらいですかね」 「開発の規模が大きいからだろう」 「いや、開発は順調に進んでいて、港や工場の建設工事等は終了していたし、工場等も問題なく稼働しているのに、開発を行っていた時より多くの社員がK島に行っているので、そこが気になったけど、麻薬の線とは関係ないようですね」 「麻薬を扱っている点には辿り着けなかった訳か。まっ、辿り着かれる前に手を打たれたってことか」 「国際問題になってしまう可能性が高いですからね。と言う訳で、沖田刑事に助けてもらったのに、こんな結果になってしまって、悪いですね」  最後は軽い感じで、私に軽く手を振って、この場を去っていった。  ここまでだな。  上からの圧力に抗うような奴じゃない。 麻薬担当で総力を上げて、捜査を行っていたはずだ。麻薬の件を掴まれる前に、上を動かして手を打ったと言うことだろう。  けど、杉山の情報で見当はついたよ。  使えない奴にしては、上出来だった。  後は、ニコライの情報が欲しいな。  そう思った瞬間、御影から連絡が入った。
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