信念の地

2/4
前へ
/35ページ
次へ
 作業着に着替えるよう指示が出る。作業着に着替え、ケシ畑を前にして、某企業の社員が熱心に説明を受けることになる。  R国は相変わらず他の国の人間を、こき使うのが好きだな。  けど、つき合う気はないから。  私は気配を消し去るかのように、意志を失った群れから離れていく。  つまらない挨拶と今後の予定には興味がない。  いや、従う気など毛頭ない。  どうせ、強制労働と変わりはないでしょう。  狙うはニコライの首!  私はここに来る前に手に入れた改造拳銃と警棒を隠し持ち、ケシ畑を囲むような感じの丘の最も高い所を目指す。  バカと何とかは高い所が好きだからね。  ニコライは一日に一回はそこに来るとの話だ。  自分が成し遂げた勘違いした偉業を、毎日観察して、ほくそ笑んでいるのだろう。  愚の骨頂だな。  お前みたいなバカ程、そういう事をやるものさ。  久しぶりに暫く歩くことになったけど、良い運動だ。  つまらない事が、次々と頭の中に浮かんでいるから、単純な動作の繰り返しでも飽きることがない。  ニヤニヤした表情を浮かべながら歩いていたら、いつの間にかこの丘の最も高い所に到着していた。  そこには、既に先客がいた。  車椅子に座っている男とその脇に立っている男の二名だ。  車椅子に座っている男はニコライだ。脇に立っている男は知らない。知る必要もないでしょう。  雑魚でしかない。 「ニコライさん。ケシ畑が創り上げる、社会を破滅へと導く優雅な景色は如何ですか~」  ニヤニヤと笑いながら、ニコライに話しかける。  ニコライは私を見て、下を向き、微かに微笑む。 「表情こそ厳しくなりましたが、あの時のお嬢さんでしたか。よくここまでたどり着きましたね」 「厳しくなったのは、表情だけではないですよ」 「ここに来た目的は?観光ではないですよね」  笑みを浮かべながら、惚けた事を言ってきた。 「私を殺し損ねた事を、後悔させてあげようと思って」  私の回答に脇の男が反応をする。  男はサーベルを抜き、刃先を私に向ける。  私は作業着のポケットから警棒を取り、鋭い金属音を響かせて警棒を伸ばし、男に向ける。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加