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走り抜けて
不意に近づいてくる足音が耳に入ってくる。
「来るのが遅すぎましたね。止められませんでしたか。残念です」
聞き覚えのある声に、構えた改造拳銃を下ろす。
「どうして御影さんがここに」
「沖田さんを止めたかった。それだけです」
「そう……。遅かったわね。もう二人もやってしまったわ」
息が漏れる笑みを浮かべ答える。
「この後はどうするんですか。ニコライを殺してしまった事は、もう村の人達に知れ渡っているかもしれません」
「何も考えていないわ。上手く本土に戻れればいいけど」
「そんな事だろうと思っていました。村を走り抜けるしかないですね」
「単純な計画ね。上手くいくの」
「成功率はかなり低いですかね。けど、他に方法もないでしょう。ルートはこちらになります」
御影は私に地図を渡す。地図には二つのルートが示されていた。丘を降りて、村を一気に駆け抜けるつもりだろう。
途中から道が二手に分かれていて、赤と青で示されていて、最後に海辺に合流するルートになっていた。
「赤い方のルートが沖田さんになります。二手に分かれて、追いかけてくる連中を二分しましょう」
「面白いわね。生き残るのはどちらになりそうかしら」
意地悪な表情を浮かべながら、問いかける。
「二人で本土に戻りましょう」
御影の表情から強い意志が感じられた。
「沖田さん。その改造拳銃、こちらと交換しましょう。それじゃ、まともに戦えないでしょう」
御影はバッグの中から別の拳銃を取り出し、予備の弾倉と一緒に渡してくれた。
「この丘を二人で仲良く降りましょうか」
「そうですね。そこから先は二手に分かれて、一気に村を走り抜ける。合流地点の海岸に船が準備してあります」
「その船大丈夫なの?」
「ここに来られたので、帰りも大丈夫だと思いますよ」
いつの間にか御影との会話を楽しんでいた。
私は右手に拳銃、左手に警棒を持ち、御影と丘を下りていく。
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