走り抜けて

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 舗装はされていないが、土がしっかりと固まっている。砂地を走るより、遥かに楽だ。  廃屋のような建物が何件か建っている。  建物の影から一気に襲ってくるのが、常套手段だろう。  そう思った矢先、左側から鉄パイプのような物を持った男が襲い掛かってきた。  振り落とされる鉄パイプに対して、身体を右側にスライドさせてかわす。  男は勢い余って前のめりになる。警棒で首を抑え、拳銃のグリップを後頭部に叩きつける。  別の男も鉄パイプを振りかざし、飛び掛かってくる。  振り下ろされる鉄パイプを下がってかわし、空を切る乾いた金属音を虚しく響かせる。  男は右斜め上、左斜め上からと、連続で鉄パイプを地面にでも叩きつけるかのように振り下ろしてくる。  下がってかわし、距離をとるが、男は一気に距離を詰めようとして、走りながら鉄パイプで大きく振りかぶる。  一歩踏み込む。  左腕を真っ直ぐに伸ばす。  警棒の先端が、男の喉を貫くかのように、カウンターで捉えた。  男は異常な咳をしながら、正面から倒れ込む。  右足で倒れ込んだ男の後頭部を踏みつける。  海岸に向かって走り出そうとした時。  鉈を持った男が右側から振り抜いてきた。  警棒を翳して何とか防ぐが、男に押し切られて、建物の壁に背中を打ち付けられてしまう。  銃声と共に男はへたり込み、倒れ込む。  腹に鉛玉をぶち込んでやった。  再び、海岸に向かって走り出す。  弾丸の数には限りがある。大切に使わないと。  走りながら、数発の銃声が響く。  御影も頑張っているみたいだね。  こっちも負けてはいられない。  御影を船で待たせるのは、私としては納得がいかない。  船で待つのは私だ。  身を切るような冷たい風が吹く中、再び走り出す。  海がはっきりと見えてきた。  海岸は近い。  建物の影から男が飛び出してきて、待ち構える。  持っている武器は手斧のようなもの。  男は私の頭を狙い、手斧を振り落とす。  身体を右斜め下に倒し、右手を刺し込んで、身体を回転させてかわし、男の横をすり抜ける。  回転の勢いを利用して片膝立ちになる。  右腕を伸ばし、引き金を引く。  男は腹を打ち抜かれ、バッタリと倒れる。  立ち上がり走り出そうとした矢先、右側から男が奇声を張り上げて、鎌を持って襲ってくる。   斜め上から振り抜かれる鎌。 警棒を翳して鎌の一撃を抑え、急所に左の前蹴りを突き刺すように打つ。  男は喘ぎ声を上げ、両膝をつく。  男の脳天を拳銃で打ち抜く。  走り出そうとした時、建物の上の方から何かを蹴り上げるような音が響き、動きを止め音の方を振り向く。  小柄な男が飛び掛かってきた。  上から体重をかけて圧し掛かってくる。倒れ込むも、上からのハンマーの一撃を警棒で防ぎ、同時に拳銃で胸を打ち抜く。  飛び散る返り血浴びながら、小柄な男を払いのけて立ち上がる。  小柄な男の正体は、少年だった。  悪いわね。  子供には優しいけど、敵だったら容赦しない。  武器を持って私に近づいた時点で、子供ではない。  敵として扱う。  運が無かったね。  ぼうや……。  海岸に向かって走り出そうとした時、私の後ろで何人かの男が武器を持って立っていたことに気づく。  笑みを浮かべ、拳銃を向ける。  男達は立ち竦み、怯えきった表情を浮かべ、悪魔でもみるような目で私をみていた。  どう見られようと構わないけどね。  こいつらの中に、私に攻撃を仕掛けてくるような奴はいない。  私は走り出す。  海岸に向かって。  邪魔をする奴は容赦なく叩き潰す。  それだけのこと。  
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