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海堂さんと会った日。
子供のお迎えだと言って別れておきながら、
私はすぐ帰る気にならなかった。
自分はすでに結婚し、子供だって二人いる…。
夫との夫婦関係も良好で何の不満もない。
なのに…涙が止まらなかった。
二人の結婚は、素直に嬉しい。
香澄のことも、海堂さんのことも大好きだ。
大好きな二人が幸せならそれでいいじゃない。
そう思うのに…どうしてよりにもよって…。
妻が香澄で夫が海堂さんなんだろう。
親友に大好きだった彼を取られたという気持ちはない。
むしろ一人だけ取り残されたような、複雑な気持ちが渦巻いていて…。
自分の気持ちなのにどうすればいいかわからず。
彼らに会うのが怖くなって、子育てに忙しいと理由をつけて、
その後、香澄が会わないかと何度誘ってきてもずっと断り続けた。
会ったら何を言うかわからない。
そんな爆弾が自分の中にある気がして会えなかった。
香澄は、体が弱く結婚後もすぐ子供を授からなかった。
不妊治療とまではいかなくても、香澄がやっと妊娠したとき。
同じ頃に私も第三子を妊娠した。
香澄とは偶然にも同じ病院の、妊婦健診で会うようになり、
互いに子の性別が娘だとわかってから、私達の交流は、また始まった。
会話は、生まれた娘達のことになり、
香澄と二人だけで会うには、大丈夫になった。
海堂さん、いえ湊斗さんも、私の夫も子煩悩で。
時には私達、妻二人でリフレッシュしておいでと送り出してくれ、
遠慮なく二人で羽を伸ばすことができた。
香澄は時々体を悪くすることもあったけど。
このままずっと娘達を一緒に育てながら、悩んだり、泣いたり、
喜んだりしながら、歳を重ねていくのだと思ってた。
娘が成人したらのんびり二人で旅行しようね、とか。
私だけが。
私一人だけが。
そんな未来を描いていた…。
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