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I Want Your Love
窓を叩く雨粒に眠っていた私は目を覚ました。
今は、何時頃なのか室内は、無機質な機械音だけが響く。
(窓の外が明るいところ夜ではないな)
ドアをノックする音と同時に男が一人入ってくる。
「海堂、目が覚めたか」
男は学生時代からの親友、鈴木だ。
一体私はどうしたのか周囲を見渡すと私は病室で寝かされている。
「全く心配したぞ。研究室で倒れたと聞いて駆けつけたんだ」
来て早々説教を始める親友のそばに私はある人の姿を探してしまう。
「海堂?」
「…僕は…倒れたのか…」
やっと言えたのがそれだけでそうだと鈴木は、呆れた顔をする。
「研究熱心なのは結構だが。嫁さんを早くに亡くし、娘もそばにはいない。
おっさんの一人暮らしのくせに無茶するなよ」
(逆だ。おっさんの一人暮らしだから無茶をする)
私には妻も、近くにいてくれる娘もいない。
若い頃から変わらず研究に没頭し、半分はそれに逃げている。
ずっと一人というのは、良くも悪くも考えることが増える。
考えてしまうのは、いつもあの人のこと。
こんな雨の夜は、嫌でも過去を連れてくる。
過去に心を囚われかけた私に悪気なく鈴木が言った。
「もうすぐ小夜子さんも来てくれる。ちゃんと礼言えよ」
小夜子さんの姿を探していたのを見透かされている。
――――鈴木は知っている。
学生時代から私が小夜子さんを想い、今も愛していることを…。
互いに結婚し、別の人生を歩んでいるというのに…。
それなのにあの人に愛されたいと思う、浅ましい私を。
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