23人が本棚に入れています
本棚に追加
「兄い、いいわよ~ん」
ミツとカツが抱き合ってヤジを飛ばす。
「放水はじめ」
「放水はじめ」
隊員が復唱する。見事火点に放水する。
「放水止め」
「放水止め」
完璧である。中田と幸三は一瞬目が合い気合を入れた。
「おさめ」
指揮者の号令で幸三は実地要領通りにとび口を抱えて持った。反転した。立ち眩みがした。あっと思った時には膝をついていた。
「ああっ」
会場から漏れる溜息がひとつにまとまった。
「幸三」
父の幸三郎が拳を握って目を瞑った。
「幸三、立て、立てよ、まだ終わってねえだろう」
声の主は和樹だった。
「か、和樹」
「幸三、立て、立って最後までやれよ。今止めたら前と一緒だろ、抜け出せよ幸三、また虐められる世界に生きるのか、立て、立て幸三、やり切ってから泣けよ。俺が付き合ってやるよ」
幸三が立ち上がる。
「幸三、最後までやろう」
中田が幸三の肩を叩いて言った。
「フレッー フレッー コ・ウ・ゾ・ウ」
小百合に肩車されたマサがエールを送る。
「フレッ、フレッ、幸三、フレッ~」
全員で声を合わせた。
最初のコメントを投稿しよう!