職場で

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職場で

佐久間美智留は、ランチ会の事はなるべく忘れようと職場のイタリアンレストランで次の日にはいつも通りに働いていた。 周りはオフィスが多いところなので、ランチ時には次々とお客さんが来て毎日盛況だった。 その為美智留が働いているレストランは日曜日になると人通りが少ないので日曜日は定休日にだった。 友達とも予定を合わせる事ができて楽しく働ける 職場が美智留は、気に入っていた。 忙しいランチ時には嫌なことを忘れられて賄いまで食べられるこんなありがたいことはないと美智留は、この職場がとても大好きだった。 従業員もみんな仲がよかった。美智留も彼と一緒に賄いを食べられるだけで満足だった。 そして、いつものように賄いの時間になった。 賄いの時間はランチの時間が過ぎてお客さんがいなくなって落ち着いた15時だった。 賄いは店長の新作がほとんどだった。 たまに「えっ?何故これとこれを合わせた?」なんて驚く事があった。 試作品を賄いで食べてメニューに加えるか? 止めるか?どこを改良したらいいのか?を食べてからみんなで意見を言うことになっていた。 今日の賄いは「彩り野菜のヘルシーパスタ」だ みんな黙々と食べていた。 そして食べながら言った。「オーナー美味しい。これは女性に受けます」従業員は口を揃えてそう言った。 「そうか~皆に認められて嬉しいよ」オーナーはそう言ってはにかみながら笑った。 美智留は、その笑顔が大好きだった。 例え何も彼の家庭の事を知らなくても~それでよかった。 ところがこの日、賄いを一緒に食べていた従業員の伊藤咲が言った。 「オーナーって自分の家の事を一度も話してくれませんよね?オーナーの奥様ってどんな方なんですか?」そう聞かれオーナーは「個人情報だからね。あまりみんなの事も聞かないし自分からは言わないようにしてるんだ。ミステリアスの方がいいだろう?奥さんはまあ、美人な方だよ。でも、身体が弱くてね子供が出来ないんだよ。働く事も出来ないしね。僕が家計をしっかりやりくりしないとね。今はヘルパーさんにお願いしてるんだ。 妻に何かあれば帰らなくてはならなくなるんだ。 その時は、皆にお店を任せるかも?しれない。 申し訳ないがその時は頼むよ」そう言った。 皆は「オーナー大変ですね。頑張ってください」 そう言ってオーナーを励ました。美智留は、その話しはあらかじめ彼から聞いていたので「本当なんだ~従業員に話をするって事は」そう思って安心していた。 ところが別の従業員の井上恵子が言った。 「本当に奥様って身体が弱いんですか?今度大きな家を建てるんですよね?うちの旦那の不動産会社に奥様と相談しに来たそうですね?うちの旦那が言ってたんですよ?とても明るくて元気な奥さまで可愛い三歳の男の子も連れていたって」 オーナーは驚いたような顔をしてこう言った。 「私にそんなに似ている人がいたのかな?」明らかに動揺した様子のオーナーを見て美智留は、「もしかしたら?彼は嘘をついている……不倫をする男性は……今までの男性は……皆嘘をつく悲しいけどこの人もまた私に嘘をついていたのかもしれない。 そんな筈はないきっと彼に似た人が家を建てるんだそうに違いない私は彼を信じる」心の中で強く思っていた。 でも、この日はこれだけでは終わらなかった。 この日、仕事が終わった21時に帰ろうとした時、 美智留は井上恵子に声を掛けられた。 「佐久間さんちょっと帰りに近くの喫茶店行かない?話したい事があるの」 美智留は、「いいですよ」そう言った。 仕事の帰り美智留と恵子は喫茶店に入った。 二人は珈琲を注文すると井上はすぐに話し始めた。 「佐久間さん私の勘違いならいいんだけど?前から気になっていたんだけど……佐久間さんって、もしかしてオーナーとつきあってるんじゃないの? はっきり言っておくわね。オーナーは止めた方がいい オーナーは嘘つきよ。たぶん佐久間さんが思ってるよりずっと嘘つきなのよ」 佐久間は井上に言った。「どうしてそんな事を?私はオーナーとは付き合っていません」美智留は、 井上に嘘をついた。 井上は話を続けた。「私がオーナーと一緒に働いているのは妹の復讐の為よ。あの男のせいで妹は精神を病んで入院しているのよ!あの男は嘘しか言わなかったわ。今の奥さんと結婚する前にオーナーは妹と付き合ってたの。 オーナーは妹と結婚するって言ってたわ。 でも妹と付き合って結婚の約束までしておきながら今の奥さんが現れると今の奥さんに乗り換えたのよ。しかもオーナーは妹とは、はじめから遊びのつもりだったと言って妹を振ったのよ。 とにかくオーナーだけは止めたほうがいいわ。付き合ってないならいいけど、付き合ってるならきっと佐久間さんに奥さんと別れて美智留と結婚するからお店を大きくしてとか?言ってるんじゃないの?」 美智留は、彼の事を信じていた。だから井上恵子にはっきりと言った。 「私はオーナーと付き合ってません。気のせいですよ。心配しないでください。今の私は仕事が恋人ですから。オーナーとは店舗を広げる話を聞かされていただけですよ」 美智留は、また嘘をついた。 井上恵子も「そ、そうなの~ごめんなさいね変な事言って」井上は済まなさそうな顔をして美智留に謝った。 ところが半年後ひょんな事から彼の嘘の着ぐるみが少しずつ剥がれていく出来事に美智留は遭遇してしまうのだった……。
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