寝ても覚めても君のこと

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   うだるような暑さの中、汗だくになりながら自転車を漕いで向かう先はとある大学病院。  自転車を駐輪場に停めて、正面玄関から入ると月曜日ということもあり外来は患者で混み合っている。 場合によっては二時間以上も待っている患者もいて、どうにかならないのかといつも気の毒に思う。  更衣室に入り自分のロッカーから制服を取り出してささっと着替えを済ませる。 俺の制服は白衣ではなく、水色のポロシャツにベージュのチノパン。 病院勤務といっても、医者でも看護師でも薬剤師でも検査技師でもない。 誰かの命を救うことも感謝されることもない、ただの清掃員だ。  パートのおばちゃん達に軽く挨拶をして、掃除用具が入ったカート押しエレベーターに乗り込む。 今日は二階の大部屋のゴミ集めからスタートする。 このように院内のゴミを集めて周り掃除機をかけトイレを掃除して俺の一日は終わる。  俺は佐々木(ささき) 陸朗(ろくろう) 21歳。父は医者、母は看護師で今は町の小さな診療所をしており、自分も医者になるつもりで医学部を受験するも三度失敗。 両親は最初の一度目は一浪なんてよくあることだ明るく励まし、二度目は予備校が悪かったのだろうかと共に落ち込み悩み、三度目は弟の(つかさ)が現役で医大に合格したことで家族全員から気を遣われた。  毎日、予備校に通いどれだけ机に向かっても結果は同じで辛かったけれど、自分はそれでもまだ諦めてはいなかった。 しかし三度目の受験がダメだった時、両親は俺に医者以外にも仕事はあるのだから別に普通の大学に進学しても良いんだと言った。 きっと精神的な負担を掛けまいと優しさで言ってくれたのだろうけど、司が合格したことによって俺はもう見限られた気がしてならなかった。 そこで張り詰めていた糸がプツッと切れて勉強も受験も全てをやめた。  だからと言ってずっと家に引きこもっているわけにはいかないのでバイトでもしようと派遣会社に登録し、配属されたのがなんの嫌がらせか、この大学病院だった。 言わば俺は落ちこぼれのフリーターなのだ。
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