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SISTER
滅多に開かれることのないという緊急治療室のドアの前で僕は医者と対面していた。眼前に表示されたエアディスプレイに表示されたのは姉さんの状況と今後の治療計画について。
「10,000ナゾール、高い......ですね」
これは僕が3年働いてやっと手に入れられるかもしれない金額だ。姉さんの個人型ナビのSaoriによるエマージェンシーコールで比較的早急に救急車が呼ばれたはずなのに。
「ご存知の通り、機械化されたこのネオ東京01では自死は推奨されません。そのためーー」
「”特別課税”の対象になるんですね」
ネオ東京01では市民に理想的な生活を提供するために、ネオ東京倫理図鑑でNGとされた行動を取ると課税対象になる。この高い税金は更なる機械化に向けた開発資金とされるらしい。最も、実際に自分が払うことになるとは思いもしなかったが。
僕がどう返事をしたものかと思案していると、何でもないことのように医者はこう告げた。
「あの、払わなくても良いんですよ」
「え?」
医者は僕の前に違う資料を表示させた。
「最近、倫理図鑑関連法案が改正されまして。自死をはかられた方に対して治療を望まないのであれば、代金をいただかずにこのままーー終わりにすることができます」
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