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「それで、どうしたんだ? 払わないって言ったのか」
夜中のエコノミック酒場に僕は先輩の城ヶ崎を呼び出した。タンクトップからはみ出る褐色の筋肉が特徴の男だ。トールサイズのジョッキをドンと置いて僕に向き合った。
「......2日考える猶予を貰った」
薄いウォッカしか入っていないモスコミュールをかき混ぜて僕は返事をする。
結局、僕はあの場所では答えられなかった。
「やめとけよ。お前いっつも姉の愚痴しか言ってなかっただろ。そんな奴のためにお前の3年を使うのか?」
「それは......」
城ヶ崎の指摘は正しい。僕達姉弟はお世辞にもうまくいっていたとは言い難い。
「良いのは顔だけの夢想家。人の話を聞かない。顔を見れば愚弟と罵られ、ふざけて薦めた旧型ロボットと恋人ごっこをし始める」
「確かにそう言った」
「そしてお前は幼少期から度重なる姉の奇行で女性恐怖症になった。挙句の果てには怪しげなドナーまで始めてーー」
「その話は今は関係ない」
簡単にまとめると僕達姉弟は学生の頃からうまくいってなかった。それを拗らせた僕は女性が苦手になって、友達に女性は一人もいないし恋人も居ない始末になった。それだけのことだ。
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