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生きているものは総じてあたたかいのだと思っていた時期があった。
鍵も閉めていない郊外のアパートの一室に僕は入る。いや、例え鍵がかかっていても指紋認証で僕は合法的に鍵を開けることができただろう。これは僕の肉親の部屋だ。
「また、例の病気かな」
僕の姉、雛垣 游夢(ひながき ゆめ)は繊細で獰猛な人だった。愛が欲しくて、愛に飢えている。傷つきやすいのに、刺激を求めずにはいられないからいつも傷を増やす。何度も何度もそんなことがやめられない哀れな人だ。僕はといえば、そんな姉さんを病気と称して冷めた目で見るのが日常だった。
玄関の扉を開けると冷気が噴き出してくる。姉さんの部屋は異常なくらい冷たい。何があったのかと辺りを見回す。目に付いたのはスマホを握ったまま人型ロボットの横でぐったりと倒れた姉さんだった。今まで散々姉さんに振り回された僕でも流石に驚きを隠せない。
「......ちょっと、勝手に死なないでよ」
これは、遠くへ行ってしまった姉さんと僕の話。
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