【蛹は、蝶の夢を見る。】⑪

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【蛹は、蝶の夢を見る。】⑪

ピンポーン 朝倉の家のインターホンが、鳴った。 「ごめんね、ちょっと出る」 「宅急便か?」 「さあ?」 朝倉は、鍵を開けた。 ガチャ 「お前さ、何で来ないの?」 隆二が、来た。 「帰って」 「ふざけんな」 手首を強く掴まれる。 「痛いよ」 「やめろよ、お前。」 二人を見つめて、隆二は言った。 「こた、お前、こいつに愛されるって思ってんの?無理だろ?ヤリもく野郎掴まえて聞かせてんじゃねーぞ」 「離して」 「やめろ」 「お前には、関係ないだろ?離せよ」 隆二は、南条の手を振りほどいた。 「衛、話しするよ。ちゃんと。だから、少しだけはずしてくれる?」 「お前、ちょっと外でろ」 南条は、隆二を玄関の外に出した。 「変な事されそうになったら、呼べよ」 南条は、スマホを取り出した。 「鳴らして」 「うん」 朝倉は、南条のスマホに連絡先をいれた。 南条は、発信を押した。 「あいつの言葉、信じるなよ。わかったか?小太郎」 「うん、わかってる」 「俺は、始まりはおかしくなったけど、小太郎を大事にしたいから。わかってくれ」 「うん」 「じゃあ、喫茶店にでも行ってるから。終わったら、連絡して」 「わかった」 南条は、玄関を出る。 入れ違えに、隆二が部屋に入った。 本当は、不安で堪らなかった。 ガチャンと閉まった扉を見つめてしまった。 「大丈夫、大丈夫」 顔を両手で叩いた。 心配するな。 小太郎は、ちゃんと俺を選んでくれる。 そう思っても、涙が込み上げてくる。 エレベーターを降りた。 喫茶店をスマホで探す。 すごい、近くにあった。 俺は、そこに行った。 カランカラン 「いらっしゃいませ」 「えっと、モーニング」 「かしこまりました。」 「はい」 「後、アイスコーヒーで」 「かしこまりました」 店員さんは、去っていった。 俺は、スマホを見つめる。 電話が鳴りますように…。 鳴りますように…。 「お待たせしました。」 トーストとゆで玉子とサラダがのったプレートがやってきた。 小太郎が、あいつに抱かれてる想像をしてしまった。 ヤバ、泣けてきた。 店員さんは、スープを持ってきた。 「サービスです。温まりますよ」 「ありがとうございます」 ミネストローネを差し出された。 俺が泣いてるのをわかって渡してくれたんだ。 俺、小太郎が好きなんだ。 たった一日なのに、凄い好きなんだ。 スープが、胃袋に染み渡って涙がとめられない。 小太郎が、俺よりあいつを選ぶのなんてわかりきってる。 なのに、選ばれると思ってる自分がヤバイ。 南条は、モーニングを食べながら泣いていた。 . . . . . 一方、朝倉小太郎…。 「コーヒー、いれるよ」 「そんなのいらねーよ」 パリン。 隆二に抱き締められて、マグカップを割ってしまった。 「ごめん、危ないから。あっちに、座ってて」 「そうだな」 隆二は、マグカップの破片を一つ握りしめて、手の中で握りつぶした。 「危ないよ、隆二」 さっと、手から外す。 マグカップの破片が、真っ赤に染まって床に落ちた。 パリン 他の破片と混ざりあった。 「手当てしなくちゃ」 小太郎は、隆二を立たせる。 「向こうで、これで押さえて待ってて」 タオルを手に巻き付ける。 隆二は、何を考えてるのかおとなしくソファーに座る。 小太郎は、急いで破片を片付ける。 救急箱を持って、隆二の横に座った。 「手、見せて」 そう言った瞬間、隆二は小太郎をソファーに押し倒した。 「何?」 「どうでもいいから、やらせろ」 「嫌だよ、やめて。隆二」 「お前に権利なんかないんだよ」 わざと、小太郎に血をつけてく 「やめて、やめて」 「こた。お前は俺のだ」 嫌なのに、やめて欲しいのに、体は、スルスルと隆二を受け入れる。 わかってる、隆二は僕を玩具にしたいだけだって わかってる、なのに、どうして 泣きながら、起き上がった。 「手当てするよ」 「わりいーな」 僕は、救急箱の中を開けて、手当てをする。 「終わった」 「こた、心配すんなよ。お前の欲求は、俺が満たしてやるからな」 どういう意味? 「もう、子供も出来たからさ。俺は、暫くこたのもんでいれるから。なっ?」 「帰って」 「こた、なに言ってんだよ」 「帰ってよ」 「また、明日も頼むぞ。こた」 嫌だって、叫べなかった。 スマホを握りしめて、洗面所の床に座り込んだ。 身体中に、ついた赤色に吐き気がする。 無理矢理されたのが、嫌とかじゃない。 僕を愛していないのを感じてしまったんだ。
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