【蛹は、蝶の夢を見る。】⑮

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【蛹は、蝶の夢を見る。】⑮

エピローグ 一年後ー 出会ったbarに四人は、来ていた。 「いらっしゃいませ」 「バーボンロック」 章吾と悠斗は、手を繋いで来店してそう言った。 もう、黒縁眼鏡はつけていなかった。 「いらっしゃいませ」 「バーボンロックで」 衛と小太郎も、手を繋いでやってきた。 あの日のように、座った四人の前にバーボンロックがやってきた。 「あれ、付き合ったの?」 「そっちも?」 四人は、顔を見合わせて頷いた。 「飛んでいたい場所を見つけたんだ。」 章吾は、笑って小太郎に話た。 「僕も、同じだよ。蝶でも蛾でもいいと思った。ただ、飛んでいたい場所を見つけたから…。」 「もう、蝶の夢を見なくていいって事?」 「うん、夢を見なくていい。例え、蝶になれなくても…。僕は、飛び続けたい場所を見つけたから」 章吾は、小太郎の目を見つめていた。 あの日と違った目をしていた。 それは、幸せそうで 隣にいる人が、二度と自分を置いて飛んでいかないとわかってる目だった。 「よかったね」 「そっちも、よかったね」 「うん。ありがとう」 乾杯をして、お酒を酌み交わす四人 この一年の出来事を話たりした。 連絡先を交換して、店をでる。 「じゃあ、また。今度は、ごはん食べよう。章吾君、悠斗君」 「じゃあね」 「うん、バイバイ」 「気をつけてね」 小太郎と衛は、手を繋いで歩きだした。 半年前、嫌がらせに隆二が子供の写真を送りつけてきた。 小太郎は、何も心を書き乱される事がなかった。 隣で、その写真を覗き込んだ衛が言った。 「不細工だなーー」 その言葉に、胸に刺さっていた棘がポロリと取れたのを感じた。 「小太郎、愛してるよ」 「何?急に…。」 人の目なんか気にしないで、どこでも愛を伝えてくれる衛の存在が嬉しかった。 「俺だけ、言うの?」 「衛を愛してるよ」 「よくできました。」 衛は、僕の頭を撫でてくれる。 衛が、教えてくれる一つ、一つの愛が僕に勇気や自信をくれる。 二人でもいいじゃない。 生きていきたい相手を見つけれただけ幸せだと思った。 僕は、もう蝶の夢は見ない…。 俺は、小太郎を絶対に離さない。 二人は、手をギュッと力強く握りしめて夜の闇に消えていった。 一方、章吾と悠斗は…。 「素敵な二人だったね」 「あぁ、本当に」 「僕達も、二人みたいになったかな?」 「とっくに、なってるよ」 章吾は、悠斗の腕にしがみついた。 「僕も、もう蝶の夢を見るのはやめるよ。」 「まだ、見てたのか?」 「見てた気がするんだ。蝶には、なれないってまだ思ってた気がするんだ。でも、二人と話して!蝶にならなくていいって思ったんだ。」 「そうだよ。」 「僕は、悠斗がいればそれだけでいい。愛してるよ」 あれから、愛してると言えるようになった。 「俺も章吾を離さないから」 悠斗の気持ちに嘘がないのがわかる。 ただ、悠斗の周りを飛び回ってる事が許される。 それだけで、救われる。 「愛してるよ、章吾」 「うん」 言葉にしなきゃ、続かない関係は意味がないと言われた事がある。 だから、僕は淳に思ってる事を伝えなかった。 ズルズル続けた先に、別れが落ちていた。 言葉にしなきゃ、いけなかったんだと知った。 それが、二人で生きていく事 繋ぎ止める子供(もの)を持たない僕等の、唯一の言葉(ツール)なのだ。 それをやめれば、僕達は終わりなんだよ。 片寄った考えだと笑うだろうか? そんな事はないと怒るだろうか? でもね、僕はあの日この耳で聞いたんだよ。 この目で、見たんだよ。 いなくなるのを…。 3ヶ月後、引っ越しをしに行った日に、淳が僕を見つけた。 出来ちゃった婚に成功したと言った。 僕は、笑っておめでとうと言った。 子孫繁栄は、人間にインプットされてるんだ。 僕は、体の誤作動でそういう気持ちがもてないだけだ。 「章吾、眉間に皺寄ってる」 「ほんとだ。ごめん」 「いいの、いいの」 僕は、もう蝶の夢を見ないし。 見る必要もない。 この手を離さない限り、飛べるから 俺は、章吾の花であるのをやめるつもりはない。 だから、誰にも渡さない。 四人は、あの言葉を思っていた。 蛹は、蝶にはなれない 夢を見ていたのに…。 でもね、蝶も蛹には戻れないのよ。 だったら、もうどんな姿でも飛び立ってしまえばいいだけなの 誰にも、見えない場所へ 飛んでしまえば、蝶かどうかなんてわからないじゃない。 だから、もう蛹は夢を見ない。 蝶になりたい夢を見ない…
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