【心だけが繋がらない】①

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【心だけが繋がらない】①

「春、昨日の今日で呼び出される思わんかったわ」 「夏、あんな。俺な」 「うん、何やねん。」 「七海とアカンなってん」 「どういう意味?」 「別れなアカンくなってん」 酷いけど、心ん中でガッツポーズしてる自分がいた。 「なんでなん?」 「好きなやつ出来たんやって」 「そうなん」 「うん。そいつとおったらオモロイねんて」 春は、ポロポロと泣き出した。 「また、次の恋探そうや!手伝ったるやん」 「簡単にゆうなや!」 「えっ?」 「夏は、恋してへんからわからんのやろ?ホンマに好きになった事ないからわからんのやろ?次に何か簡単にいけるわけないやん」 「ごめん。ごめんな。」 わかってないのは、春の方だ。 僕が、どんな思いをして春の隣にいると思っているんだろうか? 「言いすぎた、こっちもごめん」 わさわざ、電車に乗ってこの公園に来た意味を僕はきちんと理解していなかった。 理解していたら、きっと止めれていた。 「大丈夫やって、気にせんといて」 「夏は、好きな子おるん?」 春が好きですって、言えたらどんなにいいのだろう 「僕、僕は、おらんよ。ほら、まだ友達とおる方が楽しいから」 「そっか!」 そっかって、何なん 僕が、春を見てる視線に気づいてないの? 「夏」 「なに?」 「俺も、楽しいよ!夏とおるん」 「改めて、キモいな」 「ハハ、言い方な!」 「ごめん」 「全然、気にせんで!ほな、帰ろか」 「うん」 僕と春は、並んで歩く。 「なぁー。」 「うん?」 「今度、大阪行こや!服買いに」 「あー。うん。ええよ!バイト代、貯めとくわな」 「うん!ほな」 「ほなな」 改札を抜けたら、反対側のホームになる。 「なぁー。ありがとうな!夏」 「うん!また、いつでも呼べや」 「わかっとる」 何で、卒業したのに学校の近くの、公園に呼ばれたのかを考えるべきだった。 春の手を掴んで、まだいようって言うべきだった。 あの頃の僕は、臆病者で…。 自分の痛みに敏感で、春の痛みにちゃんと気づいてなかった。 反対側のホームで、いつも春を見るのが好きやった! 「夏ー」 「えっ?」 「いつか、また。会えたらええな。」 「はあ?」 「どっか、しらん国とかな」 「何の話?携帯鳴らせよ」 「まあ、ええやん。今日ぐらい」 「どないしたん?」 「どっかの国で待っとるよ!俺、やっぱり無理やから」 「何の話?」 「七海の事」 僕の方の電車が、入ってきた。 気になって、見送る事にした。 春のいるホームが、よく見えない。 「ヤーーー」 「キャーー」 叫び声があがる。 「男の子が、落ちてもうた」 「死んだんか?」 何が、起きてる?! 「はぁ、はぁ。」 トントンって、肩を叩かれた。 「はい」 「今さっき話してた子が、誤ってか貧血かわからんけど、電車来たときに落ちたで」 「えっ?」 お兄さんは、僕を見ながらそう言った。 . . . . . . ガバッ…。夏は、布団から起き上がる。 どうやら、寝てしまっていたらしい。 「はぁ、はぁ」 息が、荒くなる。 これを、見る時に一人なのが嫌だった。 スマホを取り出して、冬にかけた。 プルルルー 『もしもし、深呼吸な』 「冬」 何も言わなくても、その夢を見たのが冬はわかっていた。 『まだ、ラブホか?』 「うん」 『じゃあ、その前におるわ』 「仕事は?」 『さっき、帰宅するって連絡しといた』 「わかった」 『はよ、来いよ!』 「うん、用意する」 プー、プー 何も言わなくても、冬はわかってくれる。 心が、冬を求めたらどんなに楽だろう 時々、そう思った。 だって、僕と冬はもう15年もセフレだ。 それでも、好きになられへん 体以外、何もない。 そんなの間違ってるって言われても、事実なのだから仕方なかった。 衣服を整えて、ホテルを出た。 部屋精算のホテルの楽さ 「チーズ食いたい!とろけてるやつ」 「ええやん」 僕が、出てきたら冬がそう言った。
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