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【心だけが繋がらない】③
「お風呂、沸かしたで!何や、寝てもうたんか!」
俺は、風呂のスイッチを止める。
寝室から、毛布をとってきて夏に被せた。
「出会った時から、思ってたけど…。睫長いな。綺麗な唇やな!プックリしてて」
俺は、夏の唇を指で、なぞった。
barで夏に出会って、沢山話をして、半ばストーカーのように会いに行った。
落とせた時は、嬉しかった。
最初から、秋を忘れられる気がしてた。
話をして、同じ傷を持ってるのがわかった。
俺、夏を好きになれたら幸せなんやろな…。
人生、思い通りにいかへんな…。
こんなに、身体を重ねても何一つ心が動かへんっておかしいよな。
毎月13日は、秋の為に一日を使う。
夏も同じだ。春さんの為に使う日が、一日ある。
一緒に暮らしたらどうするべぎだろうか?
漫喫かカラオケにでもおるか…?
ヤバい、何かねむなってきた。
夏の寝息聞いてたら、アカンわ。
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「冬、俺の彼女妊娠した。」
「えっ?」
動悸がするぐらい、心臓の鼓動が速くなる。
「結婚するって…」
「そっか」
当たり前だよな。妊娠したら、結婚するに決まってるよな。
「俺、もう生きていきたない」
「えっ?秋が、結婚するんやろ?」
「ちゃうよ。彼女が、別の男と結婚すんねん。」
俺は、喜んでいた。
秋が、結婚するんじゃないならよかったって…。
酷いけど、嬉しかった。
「そうなん。」
嘘つきだ。悲しそうなフリした。
「俺が、結婚したかった。志保を幸せにするんわ、俺やと思っとったから…。」
「秋………。」
「冬、俺もう死にたい」
「何で、そんなんゆうねん。」
「志保とおられへん、俺なんかいらんねん」
「そんなんゆうなや。新しい恋を探してみろや!秋、一人に縛られてたアカンで!今は、悲しくても、未来は笑ってるって」
「冬に何がわかんねん。恋愛もした事ない人間が、偉そうにゆうな。新しい恋なんか出来るわけないやろ」
泣きそうな気持ちをグッと堪えた。
秋の方が、俺の何がわかんねん。
お前を好きやのに、頑張って隠して生きてる俺の気持ちの何がわかってんねん。
秋がいなくなったら、生きていけないなんて言ったらひくやろ?
今、好きって言ったらいなくなるやろ?
気持ち悪いって、言うやろ?
「ごめん。俺、最低やな。別の人に相談してや!俺じゃ役に立たんから」
ここにいたくない。
泣いてしまう。
下を向いて、俺は帰ろうとした。
「ごめん。冬、言いすぎた。なあ、冬。何で泣いてるん?」
ヤバい、顔見られた。
「ごめん。俺、もう帰るわ」
「俺が、いなくなったら嫌なん?」
「あ、当たり前やろ」
「俺ら、親友やもんな」
「うん」
「でも、俺……。生きれるかな?」
「俺が、おるやん。いっぱい会って、いっぱい話聞くから。せやから、せやから、生きとってくれや。秋」
「わかった。もうちょい頑張ってみるわ」
秋は、ニコッて笑って俺を抱き締めた。
そうゆうとこが、ズルい。
好きな気持ちを離してくれない。
でも、俺はあの女とは違う。
秋を絶対裏切らないから、だから生きててくれ。
暫く、秋は落ち込んでいた。
あの日から、10日後。俺は、秋の家に呼ばれていた。
「ごめんな」
「ううん」
「おかんとおとんと妹が、旅行いっとってさ!寂しくて」
「うん」
秋の家は、マンションの五階やった。
「冬、好きな人は?」
「おらんよ」
「イケメンやのに、彼女作らな勿体ないで」
ヒヤッとした手で、頬を撫でられた。
「イケメンやないし、モテへんし」
「高校の時、冬を好きなやつ。いっぱいおったで」
いれてくれた、珈琲をおかれる。
俺の横に座った秋の様子が、おかしい。
俺の頬を冷たい手で、また触る。
「冬、幸せにならなアカンで」
「ええよ、秋とおれるだけで」
「なあ?もしかして、男が好きとかなん?」
「はあ?何、ゆうてんねん」
誤魔化すのに、必死だった。
うんって、言うのが怖かった。
「そうよな。そんなわけないよな。もしそうやったら、一緒におるわけないもんな」
秋の言葉に、心臓がチクりと痛む。
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