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閉じたカーテンの隙間からは明るい日差しが差し込んでいるのに、ベランダの柵を雨粒が叩く音がする。
雨なら洗濯物を取り込まなきゃ、とカーテンを開けて息を呑んだ。目の前で空が二つに分かれている。右は青空、左は黒い雲。その黒い雲の方が大粒の雨を降らしている。
あれよあれよと言う間にベランダは水玉模様になり、私は慌てて洗濯物を部屋に投げ込んだ。
太陽の光を吸い込んで温かな洗濯物を腕に抱きつつ、もう一度空を見上げる。
黒い雲はドーナツ状になっていて、その穴の部分からはぽっかりと白い入道雲が顔を出していた。今にも目と鼻と口が現れて「やあ」なんて言いそうな雲だった。
変な天気。私はその入道雲から目を逸らし、今度は青空の方を見た。
雨粒が太陽の光を反射してきらきらひかる。水滴の1つ1つが大きいからだろうか、宝石みたいに何度も光る。手を伸ばすと、宝石は手の中でぱしゃりと形を変えた。
お天気雨のことを狐の嫁入りとも言うらしい。今日の雨は、嫁入りする狐のために祝儀代わりの宝石を降らしているみたいだ。
祝儀雨。私は今日の天気にこっそりそんな名前をつける。
ざあと風が吹いて、宝石がきらきら光りながら落ちていった。
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