真っ赤な

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 学校でもそうだった。ひとりになれる場所なんて何処にもない。クラス替えがあってからわたしはどこか浮いていた。別に虐められているわけでもなければ、無視されているわけでもなかった。ただ、居場所が無かっただけ。教室の中でぽっかりと浮いてしまっている。そんな気がしたまま一日を過ごしている。尤も、お母さんにはそんなこと伝わることも無くいつも通り嘘をつき続けるだけだったけど。  本当はお母さんにもっと興味を持ってもらいたかった。おおげさなくらいに気にして、味方になってほしかった。それでもお母さんはいつものように小さな嘘をつき続けて。わたしの家の中は嘘でいっぱいだった。外から見れば幸せな家庭でも、一歩ドアを踏み込めばそこにはお母さんが作った嘘ばかりが散らばっている。  家にも学校にも居場所が無くなっていったわたしは自分の身体を傷つけることを覚えた。手首は怖かったからまずはふとももにした。けれど範囲は徐々に広がって、手首を赤く染めるまでそう時間はかからなかった。痛みでなんとでもなる、そう思っていたのにさほど世界は変わることはなかった。 「この高級レストラン、美味しいんだよ」  真っ赤な嘘。行ったこともないくせに。この真っ赤な腕にも気づかないくせに。
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