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(……教室の前の方に座ってた奴らか)
「アヒルじゃかくて、阿比留なんだけど」
響生は今日支給されたばかりの学生鞄を肩にかけ直した。
「アヒルちゃんとは仲良くしてえなって思ってさー。どうせ東京でイジメられてたからこっちに来たんだろ」
真ん中にいた一番背の高い男が、響生のそれと同じものとは思えないボロボロの学生鞄を右側の奴に持たせた。
「金髪、似合ってんじゃん。東京ではそれが流行りなの?」
「やり方教えてくれねえかな。俺も金髪に憧れてんだよねー。裏の農家のババアも同じ色に染めてんだよ」
左の奴が言い、3人で盛大に笑う。
「…………」
響生は一度止めた足をまた再び前に出した。
「おかしいな。感じた視線は確かに後ろからだったんだけど」
そう言いながら3人に歩み寄る。
「何ブツブツ言ってんの?」
真ん中の男が覗き込む。
「やっぱりこの子、ヤバい系?」
鞄を持たされた右の奴もニヤニヤと笑う。
「ま、いっか。それもお前たちみたいな奴らなら、これで戦意喪失するだろうし、なっ!」
その瞬間、響生は肩にかけていた鞄を思い切り、右側の男の顔面に入れた。
「てめ……!」
慌てて拳を握った真ん中の男の手首を捻ると、そのまま半身を入れながら肘を直角に曲げ腰を返してそのまま後ろに落とした。
残った左の奴の胸ぐらを掴みあげる。
「東京のイジメられっこ、嘗めんなよ!」
倒れていた2人がのそのそと起き上がった。
「てめえ……!!ぶっ殺してやる!!」
飛び掛かろうとしたところで、
「駐在さん!!こっちです!!」
後ろから女の子の声がした。
「……やばいよ、丸ちゃん。ここの駐在っつったら、上尾じゃん」
「あいつに捕まると面倒だから行こうぜ」
左右の男たちに諭され、やっと真ん中の男は舌打ちをすると、こちらを睨みながら角を曲がっていった。
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