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「……ねえねえ、さっきのって何だと思う?」
始まった古典の授業中、教室のあちこちでコソコソ話が始まった。
「風だって吹いてなかったし、カーテンも先月はシェードに変わったし」
「地震だってなかったのにねー」
(……全くだ)
響生は両手で肘をつきながら顔を覆った。
いつものこと。
そう、物心ついた時分から、響生にとってはいつものことだった。
何もないのに高い場所にあるものが自分に落ちて来たり、通学中に草野球のボールがピンポイントで飛んで来たり。
それどころか居眠り運転のトラックが自分めがけて突っ込んで来たり、ブレーキをかけ忘れたトラクターがバックして来たこともある。
まるでどこかで誰かに命を狙われているんじゃないかと疑うほどの不幸っぷり。
(そのせいで今まで彼女が出来なかったようなもんだろ……)
響生は机に突っ伏した。
やっとOKしてくれた女子と動物園デートでもしようものなら、サルは金網から手を出して響生の髪の毛を引っ張るし、脱走した蛇に噛まれるし、挙句の果てにはゴリラが甲子園球児顔負けのフォームで排泄したばかりのウンコを投げつけたりしてくる。
かといって奇跡的に告白してくれた子と映画館に行けば、映写機にトラブルが起き、異常に熱を持ったスクリーンが燃え始めるというハプニングが起こるし、カラオケに行けば、機械を替えようがマイクを替えようが、ハウリングの音が鳴りやまず、そのうちに女のような変な声まで混じる始末。
デートした女の子は口をそろえて言う。
『ねえ、もしかして響生君てさ……呪われてない?』
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