117人が本棚に入れています
本棚に追加
/74ページ
城戸だけ今日は出払っていた。
誠はエマと会議室で仕事をしていた。
田代が真剣な顔で、足速で会議室へと入って来た。その顔にはくまがくっきり付いており、田代が人知れず尽力したことを誠は理解した。
「皆さん、少しよろしいでしょうか?」
田代の大きな通る声で会議室は静まった。
ついに来たか。
会議室は静寂に包まれ、無慈悲な言葉がよく響いた。
「日本文化振興館計画は無期限休止となりました。」
誠とエマは沸き起こる落胆の渦の中、顔を見合わせた。
ダメだったか?
田代は言葉の先を続けた。
「なお、無期限休止は決定事項であり、今日をもって建築計画を除く、すべての行程はストップとなります。各担当の方は、関係者にそのようにお伝えください。」
会議室が慌ただしくなる。
そのざわめきの中、田代が静かに皆に頭を下げていた。
「力及ばず、申し訳ありませんでした。」
消え入りそうな声、その目には悔し涙がにじんでいた。
するとその喧騒の中、誠とエマに城戸からのメールが届く。
メールを開いて見ると、2人の目には光りが宿った。
『新党の代表と会える日が決まった。』
まだだ、まだ終わってはいない。
だがしかし、ぬか喜びをさせてはいけない。
誠とエマはその日に向けて準備を進めた。
最初のコメントを投稿しよう!