左耳のピアス

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――ねえ、先生。俺さ、先生のことが好きなんだ――  心の中で何度も問いかけてみるけれど、目の前の先生には届くはずもない。  いつからだっただろう? 俺がここへ来るようになったのは……  先生は嫌な顔一つせずに受け入れてくれた。ただ何も聞かずにそこに居させてくれた。それが何よりも嬉しかった。 「それにしても、毎日飽きずによく来るな」 「いいじゃん。どうせ暇でしょ? それとも迷惑?」 「別に迷惑とは思わないけど、ここに来てもつまんないだろ?」 「そんなことないよ。先生と話してると楽しいし」 「へえ、珍しい奴もいるもんだな」  先生が嬉しそうに眼鏡の奥の目を細めて笑う。その顔が年齢よりも幼く見える。  ここに来るまで知らなかった先生の表情だ。ここへ来るようになって、俺は先生の色んな表情を見るようになった。何も知らずに日本史の授業を受けていた頃は生真面目で冗談さえも通じないような堅物だと勝手な印象を持っていた。  そう、あの日までは……
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