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「そりゃあ、幽霊は存在するからね。……だが、存在する理由はそれぞれだ。もしかしたら第三者が介入出来るかもしれないし、出来ないかもしれない。ただ、一番は――幽霊が出現しやすく第三者にも見やすくする状況を作り上げなくてはならない。それが出来なければ、本当に未遂のままだ。僕ちゃんは骨折り損の草臥れ儲けってことになる。まあ、お金すら貰えないかもだから、純粋に損になるか」
マリサの言葉に、神原は即答する。
相変わらずというか、変わらなくて寧ろ安心すらするのだけれど、本当に面倒臭そうに答えるんだよな。心霊探偵として、専門分野で仕事をしているんだから、それなりに自信と気合いを持って仕事に取り組んでもらいたいものだ――まあ、こいつが真面目に仕事をしていたら、ぼくがサポートで苦労することもないのだけれど。
「言いたいことは分かるけれど、きっと話したところでその状況を作り上げられるかは分からないけれど……」
「作れるか作れないかを聞いている訳じゃない。問題は、それを勝手に当事者が判断することではない――ということだよ。当事者ではなく第三者が聞いてあげることで、状況を分析し幽霊を出現させる状況を確立する方向へ持って行く――それが一番大事なことなんだ。ともあれ、大事なことが分からないし、分かったところでそっちに誘導出来ないのが面倒なんだよなあ」
おい、最後は明らかに本音だろう。
そんなことを言っているから、いつまで経ってもちゃんと心霊探偵の仕事が終わらないんだろうが。終わらない、というか終わらせることは出来るのだけれど……、それを未遂の方向に軌道修正させてしまうのが殆ど、というか。カウンセリングの結果、そうなってしまったのなら少しは譲歩する価値もあるのだけれど、何回かはそれって幽霊が居たんじゃないか? という素人が見ても思う事案もあった訳だし、そう思うと少しは不安なのだけれどね。
まあ、そういう事案でも――神原が言うには、幽霊を出現させるに至らない現世の理由があったから、ということらしいのだけれどね。
要するに、物は言い様だ。
「……取り敢えず、話を聞いておきたい。上がっても?」
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