第一章 地下アイドルの幽霊

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 しかし、良く刑事ドラマで刑事の勘だ――なんて言っているシーンもあるけれど、実際はそれだけで事件が大きく動くことは稀だろうし、それだけで事件が解決するならまだしも、大抵は事件が悪い方向に行ってしまうこともざらだ。そうなってしまったら刑事一人の責任では済まされない。それを監督していた上司も責任を取らされることになるだろう。そうなれば、やはり誰も慎重にならざるを得ないだろう。 「じゃあ、その探偵はどういうパターンを予想したというのか、教えてもらおうじゃないか」 「たーくん、話にはきちんとしたプロセスが存在する。説明だって証明だって、先ず結論から述べてしまうのはどうかと思わないかい?」  しかし結論を先に言ってから説明をするパターンも存在するが、それについてコメントは? 「それはそれ、これはこれだ」  ばっさり切り捨てやがった。 「じゃあ、分かったよ」  こうなった時の神原は、何を言ったって自分の理念を曲げることはない。だったらぼくはそれを受け入れて、少しでも話を長くしないように心がけるしかないのだ。 「だったら、そのパターンについて……順序立てて教えてもらおうじゃないか」 「最初は、恨みを持っているのではないか、と思っていたんだ」 「恨み?」 「要するに、ここにやってきたのは、幽霊がその存在を見つけて欲しかったから――だと思う。そしてそれはどのパターンでも、正解だと思う。つまり分岐点はここじゃない」 「見つけて欲しかった……ね。案外、寂しがり屋だったってことかな?」  幽霊も寂しがりな面はあったりする――怖い話をしていると幽霊が近寄ってくるとか聞いたことはあるだろうけれど、案外それも真実だ。百物語をしていると大抵は幽霊が近づいてきて、これだけ怖い話をしているということは幽霊が悪戯しても問題ないだろう、などと解釈してその姿を見せることがあるのだという。まあ、実際には百物語を終える頃には日が昇っていることが大抵で、結局幽霊がその姿を見せることは殆ど有り得ないのだけれどね。 「それもあるだろうね。寂しがり屋だからねえ、基本的に。幽霊はどんな存在であろうとも、その根幹には見つけて欲しい気持ちがある。何故なら、地縛霊というのはこの世に未練があるから縛られている訳で……。だから、幽霊というのは目立ちたがりな訳でもある」
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