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「どういうことなんですか? さっきから話が全く見えてこないというか……」
「つまり、幽霊というのは自覚されるようになれば見ることが出来るようになる……ということだ。最初にきみが見ることが出来たのは、幽霊の声に気付いたから――だから幽霊の姿を見ることが出来た。けれども、他の人間はそもそもそれを信じていないから幽霊の声を聞き取ることすら叶わない、という訳だ」
「幽霊の声を聞き取れない……。なら、どうしてわたしはその声を聞き取ることが出来たの?」
「恐らく、緊張でもしていたからだろう。本来の精神から衰弱している場合など、幽霊に油断を見せた場合に限り、幽霊が入る隙を与えてしまう。例えば――コップがあるとするだろう。そのコップには常に満たされるように水が供給される。それが健康な状態であるとしよう。けれども、何かしらの理由でその水が供給されなかったとしよう。そうなると、コップから水が僅かに減ってしまう。そうして、その僅かな減少分に入り込むように幽霊が入っていく。それが今の状況だ」
「幽霊は、どうしてわたしに?」
「だから……、最初は恨みがあると思ったんだよ。見つけてしまったことへの恨みか? 或いは、関係なしに人間を恨んでいるために、見つけたその人間を恨んでいるのか? 答えは分かっていなかったけれど、しかしそれでは辻褄が合わない」
辻褄が合わない――ねえ。
最初はぼくも何かしら恨みがあるから楽屋から出さないようにしているのだと――思っていたけれど、それじゃないのか?
「つまりは、幽霊は見つけて欲しかった。それは恨みでも何でもなく、見つけてもらうことに何か意義があった。見つけてもらうことに、何か価値があった……はずだ。だから、正確にはきみは幽霊を見てしまったことに恐怖してしまっていただけで、幽霊が付き纏ったことで恐怖しているのではない――違うか?」
「それは……その……」
個室に、辿り着く。
正確には、その前のドアになるのだけれど。
ここだけ閉まっていることに、何か違和感を覚えるのだけれど、もしかしてここで何かがあったから――閉まっているのか? だとしたら説明が付く。
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