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「いや、しかし……良く腐っていなかったものだね。もしかして、このトイレがひんやりしているのもそれが影響している?」
「廊下のクーラーが効き過ぎているのかもしれないな……。電気代が高いと思っていたけれど、よもやこんなことになっていたとは……」
まあ、確かに電気代が高いなと思っていたら、実は死体保存に一役買っていたというのなら、そりゃあ驚きもあるだろう。
「でも……、何処に幽霊が?」
「何を言っているんだ、たーくん。居るだろう、目の前に」
目の前?
死体ばかりに目を向けていたけれど、もしかして何かあるのか?
そう言われて上を向いてみると――確かにそこに居た。
「……やっと気付いてくれた。気付いてくれた……!」
下に居る死体と同じ服装をした存在が、そこには居た。足は消えかかっていて、浮いている。つまりは、幽霊だということだ。こういう存在は幽霊の基本的要素を満たしていると言えよう。
「しっかし、幽霊にしちゃあハイテンションな感じはするがね……」
「別にハイテンションになっても良いじゃない。あたしを見つけてからは皆見ないふりをするんだもん。酷いと思わない? 何であたしのことを見てくれないんだ、何であたしを見ようとしてくれないんだ……って思ったよ。どうしてだと思う? 誰か、答えを教えてくれないかな」
そりゃあ、答えは分かり切っていることだろう――。
「それは、きみが幽霊だからだ」
そう、こいつはそれを言い切っちまうんだ。
たとえ言いづらいことであろうとも、こいつには関係ない。何故なら、こいつは心霊探偵だからだ。幽霊専門の探偵であるこいつは、解決のためならば全力を尽くす――まあ、エンジンをそこまで掛けるのが大変なのだけれど、それがぼくの仕事でもあったりする。仕事、というか趣味というか。正直、給料を貰っても良いような気はするけれどね。
「幽霊?」
「そうだ。きみは自覚しているのかどうか知らないけれど……、死んでいるんだよ。きみはこの世界にもう生を受けていない。確かに生きていた時代もあったろう。けれども、今は死んでいる。死んでいるんだよ、死んでいるということは生きていないということだ」
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