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「……いや、本当に何度こういう事件に出会すたびにあんた達と顔を合わせないといけないのかね? もしかして、殺人犯だったりしないかね?」
緑のロングコートに身を包んだ文野刑事は、ガムを噛みながらそう呟いた。
「仮に僕ちゃんが殺人鬼だったなら、とっくに悪霊に取り憑かれて殺されていると思うよ」
「減らず口を叩くよなあ、相変わらず……」
「先輩、誰ですか?」
隣に立っていた、スーツ姿の女性警官は文野に問いかけた。
文野はボサボサになった髪を掻いて――本人は清潔にしていると言っているが、髪の見た目からそれが失われているので全く意味を為さないのだが、それはそれとして――答えた。
「ん、ああ……。心霊探偵、って奴だよ。笠川に来たなら覚えておかねえとな、新入り」
「何だい、きみにも後輩が出来たのか? ……一応言っておくが、やめておいた方が良いよ。彼は性格に難ありだからね……」
「お前が言うな。……あー、言っておくけれど、無視して良いからな、別に。それとこいつは、心霊探偵だ。オリエンテーリングでも言っただろう? オカルト専門の探偵が居て、死体を見つけたという連絡があったら七割以上の現場に居る――って。最早、死体あるところに心霊探偵あり、と言っても過言ではないぐらいにね」
そんなことになっていたのかよ、神原。
最早疫病神の部類じゃないか。
「そしてこいつはそのお世話係をしているたー坊だ。他にも何と呼ばれているか忘れちまったが、ともあれ、色んな渾名で呼ばれているのは間違いねえ。しかし、渾名で呼ばれ過ぎて本名を誰も知らないし覚えていないってところが玉に瑕ではあるな」
「どうも」
お世話係と言うと、何かメイドみたいな感じだけれど、そこまで忠誠心はないから安心して欲しい――何を安心しろと? 言っておいて、我ながら頭がおかしい話だな、これ。
「お世話係――ああ、聞いたことありますね。まさか本物と巡り会えるとは……。これから長い付き合いになるんですかね、多分」
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