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「本当はこっちから話を進めようとばかり思っていたのだが……、話が進んじまったから致し方なし、といった感じだな。実はこのホトケ、調べたところによるとムーンクイーンズのメンバーらしいんだよな。正確には、研修生といったところか?」
研修生?
「つまり――まだムーンクイーンズのメンバーにはなれていない、というところではある。きちんと説明すれば、最初にアイドルになりたくてもいきなり本メンバーになれる訳ではないんですよね」
マネージャーが説明に入る。
まあ、地下アイドルの専門家という立ち位置ではあるし。
「サンシャインズはまだそこまで大きくないのだが……、ムーンクイーンズは結成当初から本メンバーと研修生で分けて、入れ替え制を導入している。つまり、人気投票に応じてそれらが入れ替わるシステムを導入しているんですよ」
「人気投票――ね。つまり、いかにファンに気に入られているか、で自分が上に上がれるかどうかが決まると」
良く出来たシステムだな、全く。
ファンだったら、自分が好きなアイドルを推して、応援して、根回しして、投票数を稼ぐことによって――より高い地位に上がることが出来る、ということだ。何か、それって歌劇団とか相撲とかでも聞いたことのある制度だな? 人気投票がどうこう、って話はなかったけれどね。あっちは完全な実力主義だ――別にこっちが実力なんて関係ないなどと蔑んでいる訳ではないのだけれど……。
「ムーンクイーンズの研修生だった彼女が、どうしてここに?」
「理由は現状調べている。……だが、一週間前から練習に来ていないらしい。今データベースと照合したところ、捜索願も出されていたようだな。……しかし、可哀想なものではあるがね。何故、このような形で見つかってしまったのか――」
「ところで、死因は? やはりナイフで一突き……これが致命傷という理解で良いのか?」
「まあ、そうなるだろうな。……後はこっちに任せてくれ。どうせ、こいつはそれ以上の干渉はしないだろう?」
良くご存知で。
「何回こいつと現場で出会したと思っている」
話を早々に切り上げて、ぼく達は漸く解放されることとなった。
そう、最後の質問がぼくだったことからも分かる通り――もう、神原の興味は薄れてしまっている。
心霊探偵と名乗っているのは、単に幽霊専門の探偵だから――ということではない。
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