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電話をしている様子だが、声が大きくて色々と聞こえてきてしまう。
「ええと、幽霊が居て、出られる感じじゃない? あのなあ、マリサ。さっきも言ったかもしれないが、幽霊なんてそんな子供だましなことが通用すると思ったら大間違いなんだぞ! 大人をからかうのもいい加減にしろとどれだけ言ったか……。今日だって、ライブを楽しみにしてくれた人達におれがどれだけ頭を下げたか――」
「おい、たーくん、あれって……」
「幽霊、だろう。だったら、あいつの領分だろうな」
こういう話にはうってつけの人間が居る。
それを現実を知らないマネージャーに教えてやりましょう。
「ちょっと良いですか?」
「あ、何だ。今電話をしていて……。それにサンシャインズのライブは今日は中止になっていて――」
「あ、いえ。中止になっていることは知っているんです。問題は今話している内容……」
「ごめんなさいね。ちょうど帰ろうとしたら、話が聞こえてきて」
マネージャーはばつが悪そうな表情を浮かべたけれど、直ぐに答え始めた。
「……ああ。ちょっと色々あってね。メンバーのマリサが幽霊を見てそこから出ることが出来ない、って言うんだ。だからライブも中止だよ。感染症対策をして、久しぶりのライブだっていうのに、幽霊みたいな子供だましで中止することになろうとは――」
「――その、幽霊なんですけれど、解決出来るかもしれないとしたら? あ、いや、もしかしたら話を聞いたら幽霊じゃないかもしれないんだけれど」
「……どういうことだ?」
マネージャーは疑心暗鬼になっている様子だ。
まあ、そうだろうな。いきなりこんなことを言われたら、納得する訳もない。
「取り敢えず、一度会ってみてくれませんか? 話はそれから、ってことで……。一応言っておくと、そいつは幽霊にまつわることだったら、どんなことでも解決に導こうとする探偵なんです。人呼んで――」
――心霊探偵、ってね。
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