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気がついた時には、私はひとり我が家の屋根の上に倒れていた。
脱出艇も既に無く、辺りは真っ暗で、月明かりが私を照らしていた。
地球に帰ってきたのだ。
季節が春から秋に変わっていて、確かに宇宙で過ごした時間があったのだと実感する。
私の部屋を窓から覗くと、ベッドに私が寝かされていた。
都合よく窓の鍵が開いていたので、そこから侵入した。
まるで生きているかのように呼吸して眠る私のダミー風船。その左手を取り、薬指の爪を剥がす。するとスルスルと風船はしぼんでいき、乾いた小さな肉片となった。
私は風船が着ていた服に着替え、布団に潜り込み、小さな肉片を握り抱きしめてすすり泣いた。
あぁ、私も圭のことを愛してしまっていたんだ。
なのにもう、圭に会う事は叶わない。
きっとこの地球上であんなに優しく、あんなにイケメンで、あんなに私を大切にしてくれる人なんて存在しない。
私はこの先、男性を本気で愛する事なんて出来るのだろうか。
地球に帰ってきた事を、少し後悔してしまった。
圭は…私自身を帰してくれても、心は盗んでいったのね。
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