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惑星R
私達の宇宙船は無事故郷の惑星Rに到着した。
地球から母体を7体も連れ帰り、帰郷中に2人も子供が産まれている。
惑星Rの仲間達は、盛大に祝福してくれた。
「ナオ、まさか本当に成功させるとは思わなかったよ。おめでとう」
今回地球から一緒に帰郷した仲間の男が私に祝福をくれる。
私は雌になる事に成功したのだ。
パートナーに選んだ相手と交わらないまま別れ、相手の心を奪うことができた瞬間、私達は雄から雌に変化するのだ。
雌となった私は、晴れて王族の仲間入りだ。
この星で貴重な雌。
あとは王の子を産みさえすれば、一生安泰だ。
奈緒が「地球に帰りたい」と言い出す機会を狙っていた。
だけど中々言い出さないから、ワザとワイヤレスイヤホンを奈緒に見つけさせた。
自分の事は諦め、理解あるフリをして、涙のお別れをする。
もしこの計画が失敗すれば、一生強制労働だった。
しかし一生を異星人なんぞに捧げるより、同郷の仲間の為に働く方がマシというものだ。
奈緒、貴方の愛はしっかり戴いたよ。
だけど貴方が今いくら恋焦がれても、この全宇宙に「圭」はもう存在しない。私は雌に変化する時、船内で辻褄が合うように貴方の姿を真似たんだ。
あぁそう、貴方が好きな「圭」の姿だけならまだここに残っているよ。
私の3本目の指先で作った「圭」のダミー風船がね。
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