なくよ鶯、新都心！

「最近の宇宙食は種類が豊富にある、好きなものを食べて貰って構わないよ」

スコット船長は食糧庫にいくと、棚から缶詰めが入ったケースや、乾パンが詰められた缶に、チューブのレトルトカレー、コーンフレーク、ちらし寿司、それから広島風お好み焼きや、呉冷麺、肉じゃが、関西風お好み焼きにひつまぶしなどのご当地料理を取り出すと、床の上にそっと置いた。

「こんなにたくさん食事積んでたんですね」

「何時の時代も、食事は人類の楽しみの一つだ。このお好み焼きは鉄板の上で小麦粉と卵を混ぜた生地をきれいな円形に広げて、千切りにしたキャベツと、そばを乗せて、焼いておいた豚肉を乗っけて、その上にまた生地で蓋をする。そこからが凄いんだ、ヘラ二本だけでお好み焼きを素早く、型崩れしないようにひっくり返すっ！　職人技としか例えようがないよ」

和食の話になるとスコット船長のテンションが上がった。この人、それだけ和食が好きなんだろうな。栄養補助食品ばかりでは飽きてしまうので、変わった食事があるだけで気分も違うのだろう。

「その製法は広島風の焼き方ですね、関西風は生地と具を一緒に焼くんですよね。それにしても随分詳しいですね」

「ずっと同じメニューだと体調崩すからって届けられたんだ。飲み物は珈琲のほかにチルアウトやモンスターも揃ってる」

「まるでコンビニですね」

「ここでは何が起こるかわからない、素早く動くことも必要ながら、落ちついて行動することも必要。何より骨粗鬆症のくすりは欠かせない」

宇宙船のクルーがかかりやすい病気は、骨が弱くなる骨粗鬆症だ。重力により負荷がかかることで骨にカルシウムが蓄積され、骨量が増えるが、宇宙空間では骨に重力がかからないためカルシウムが約十倍の早さで放出され骨折しやすくなる。

骨粗鬆症のくすりやサプリメントで必要なカルシウムを維持出来るほか、尿路結石のリスクも下げられると報告されている。と、講習で教わったな。

「ビタミンが不足しただけでも、脚気にかかりますからね」