なくよ鶯、新都心!

6/51
前へ
/51ページ
次へ
控え室から、遣星使の一人とおぼしき女性が姿を現した。 「宇宙船の中では適度な筋トレも必要です。運動不足による筋萎縮や、糖尿病にかかるリスクが上がってしまうと、アメリカ合衆国とロシアが報告しています」 「基礎代謝が下がるということだよね。ムチルくんに紹介しておこう、今回は船医も勤めて下さる医師のルリさんだ。僕たちの星の医療器具や医療品をほかの星に提供しにいくところなんだ」 「初めましてムチルさん、ルリと申します。体調が悪いと感じたら、すぐに報告して下さいね」 ルリ先生はわたしにペコリと会釈した。 「こちらこそ初めまして、ムチルです。宇宙医学にもお詳しいんですね。シャワーやトイレなどの訓練は講習で受けているから大丈夫です」 無重力状態では血液、発汗、涙は流れないのですぐにデオドラントシートで拭き取らなければずっとくっついたままになるので、シャワー浴びただけで溺死することもある。トイレは宇宙船内の汚水タンクやバックからアルミ缶の中に移動したあと、補給船まで運ぶということも実習で教わった。 「頼もしい新卒さんね。スコット船長も身体には気を付けて下さいね」 「そうですよ。メイドインジャパンは性能トップクラスですが、医療先進国の北欧と比較するとまだまだ改良の余地を残しています。というかスコット船長の腕と脚作るの苦労したんですから」 別室から男性が姿を現した。スコット船長の義手と義足作ったってことは技士だろうか。 「ヨシムネさん、大丈夫だよ。作ってくれた義手と義足はちょっとやそっとじゃ壊れないほど頑丈だ」 「それは、何回も性能テストしていますからね。新卒さん、ムチルさんでしたか、船長のこと宜しく頼みますね、さてわたしはカップヌードルにしますか」 義手のヨシムネさんは食糧のケースからカップヌードルのパックを手にとった。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加