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7
総支配人にお礼を言った二人は、ホテルを後にした。
住所はホテルと同じ名古屋市内だった。少し郊外のほうだが、そんなに遠くはない。
立ち並ぶ民家の一つが、手紙に記された住所の家だった。
ごく普通の家だ。表札に目を遣ると、守屋とあった。蒼鳥ではない。
インターホンに人差し指を添えた研次は、手を止めた。
また関係ない人が現れ、追い返されるのではないかと、指先が震える。
「どうした研次?」
「いや、大丈夫だ」
そう言って、人差し指に言い聞かせた。
インターホン越しの声は、少し疲れているような、若くはないであろう女性のものだった。
「はい」
「突然すみません。越智棟研次と申します」
少し間をおいて、息を呑む音が聞こえた。
「研次くん? あ、え、恵美の……」
何故か分からないが、動揺している。インターホン越しでも、それが伝わってきた。
玄関のドアを開け、顔を覗かせた女性は、恵美の母親だと言った。
恵美の母は、研次と彰を丁寧に呼び入れてくれた。
そして、リビングへと案内され仏壇の前の座布団へと誘われた。
「恵美です」
恵美の母は、仏壇のほうを見ている。
「はい?」
研次は、何の冗談かと思い目を丸くした。彰も首を傾げ、頭を掻いた。
「あれ、家を間違えたかな……」
「ああ、表札ね。守屋は私の旧姓なの。ここは私の実家で、娘は蒼鳥恵美。研次くんのことは、生前、恵美から良く聞かされてたのよ。いつもあなたの話をしてた」
瞼を半分落とした恵美の母は、少しだけ鼻を啜った。
「恵美が亡くなってから、すぐに伝えたかったけど、連絡手段がなくて。その後、引っ越しもしたのに、良くこの場所が分かりましたね」
研次は途方に暮れ答えられない。
見かねた彰が「恵美さんの手紙を手掛かりに、この場所へたどり着きました」と、代わりに答えた。
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